昭和27年01月30日 衆議院 外務委員会

[016]
自由党(自由民主党) 佐々木盛雄
次に先般韓国政府の大統領李承晩氏の宣言に関連して、伺っておきたいと思うのでありまするが、李承晩大統領は、韓国の国防上の要請によるという理由から、韓国領海以外の公海の広大な水域に、国家主権を行使する旨を宣言いたしております。地理的に見ますると、東は島根県の竹島から、西は黄海の中央、南はマッカーサー・ラインよりさらに日本寄りの水域にわたり、広汎な地域に警戒線を設けまして、この水域内では船舶の自由航行は認めるけれども、資源の保護についての主権の行使というような声明をいたしました。

これに対して外務省は当局の談話を発表されまして、かかる宣言は海洋自由の原則を破壊するものである。のみならず国際漁業協力の基本観念とも相いれないものである。国際社会の通念として認めることができないという声明をなさっております。

するとこれに対してまた韓国外務当局は宣言を出しまして、李承晩宣言というものは、恒久的なものである。韓国の国家主権が外国に荒されるのを守るためのものであるといって、わが外務省の反論を、逆に日本の侵略的な意図を示したものであると言っておるのであります。

そこでさらにこの宣言の先例というようなものについても、アメリカの大陸諸国にもあるというようなことを申しておるのでありますが、一体そういう先例があるのかどうかという点と、こういう独善排他的な宣言というものが、韓国側において一方的になされるものであるということになれば、同じ立場から、日本側からも同じようなことがなされるという結果にもなりはせぬかと思うわけであります。従って日本にもそういった宣言をする権利があるのかどうかという点、さらにこれらの問題について、外務当局が具体的にどういうふうにしてこういう問題を解決しようとするかという具体策について、承りたいと思います。

[017]
政府委員(外務政務次官) 石原幹市郎
ただいま李承晩ラインの声明についてお尋ねがあったのでありますが、これはお話にもありましたように、われわれが常識的に持っております公海自由の原則を、まったく破壊するものでありまして、日本政府といたしましては、これは単なる一方的宣言としまして、これを取入れることはできない。しかも最近日米加の漁業協定等におきましても、一応原則として公海の自由ということを確立し、また海洋資源は人類の福祉のために、各国平等の立場において開発、利用するという現代における漁業に関する国際協力の基本観念から、いろいろの折衝をしておるのでありますが、そういう観念とも相いれないものでありまして、わが方としては絶対に承認し得ないということを、表明しておるのであります。このことは韓国政府に対しても明確に申し入れております。

それから先ほどこういう先例はどうかというお尋ねでございましたが、ごく例外的のものはあったかどうか知りませんが、かような広汎な声明というものは、その先例をわれわれも知らないのでございます。この問題に対しましては、近く開始されます日韓会談において強調いたしまして、韓国側と折衝し、反省を求めて行きたい、かように考えております。