昭和28年03月05日 参議院 外務・法務連合委員会

[002]
無所属 伊達源一郎
外務政務次官にお尋ねいたしますが、この竹島問題は平和会議のときに、もう日本の領土であるということの確実なことが決定しておるはずであります。私はその当時西村条約局長に尋ねたのですが、もうそれは確実にきまっておるから問題はないのだということでありましたが、先月の28日の新聞には、韓国側が韓国の領土であるということを声明し、米国がそれを承認しておるということでありますが、この真相と、この問題についての外務省の見解とを政務次官から御説明を願いたい。

[003]
政府委員(外務政務次官) 中村幸八
2月27日におきまして、韓国政府の国防部が竹島の韓国領有につきまして米国の確認を得た旨の声明を発表したとの報道が伝えられておるのであります。併し外務省といたしましては、この問題につきましては何ら正式にいずれの方面からも通知も通告も受けておりません。お話のように、竹島につきましては古くから日本の領有であるということにつきましては何人も疑いなかったところであります。今日といえども、日本の領有であるという確信を持っておるのであります。それにつきまして韓国政府の声明なるものが発表されましたにつきまして、一応外務省としての見解、又従来韓国政府と日本国政府との間にいろいろこの竹島の帰属の問題につきまして交渉せられた面もありまするので、それらの経緯につきまして御説明申上げたいと存じます。

竹島の概況、或いは日本領有の経緯と経営の大要につきましては、只今お配りいたしました「日本海の竹島について」というパンフレットによりまして御覧を頂きたいと思うのでありまするが、確かに日本の領土であるということについては、何ら疑いを容れる余地がないのであります。竹島の帰属が問題になりましたのは、昨年の1月18日に、李承晩大統領が海洋主権の宣言を行なって以来のことであります。この李承晩大統領の宣言は、韓国の魚族保護の水域を確定するに当りまして、竹島をもその範囲にした、即ちいわゆる李承晩ラインの中に一方的に取込んでしまったのであります。

そこで我がほうといたしましては、この李承晩大統領の海洋主権宣言に対しまして、1月の28日付を以ちまして韓国代表部宛に口上書を以て抗議をしたのでありまするが、その際同時に竹島の問題につきましても、この宣言において、韓国は竹島として知られている、或いは又リアンクール・ロックスとして知られておるところの日本海の小島に領土権を主張しておるように見えるが、日本国政府は当然日本の領域である竹島に関する韓国のかような僣称又は要求を絶対に認めるものではない、こういうことを特に主張しておいたのであります。

ところが韓国側はこの李承晩ラインに関する我がほうの抗議に対しまして、2月12日付口上書を以て反駁して参ったのでありまして、その際同時に竹島についてもその懸隔を深くいたしております。それによりますと、韓国政府は数世紀の間朝鮮で独島として知られているリアンクール・ロックスの領有に関し、ここで仔細に亘って議論を行おうとは思わないが、1946年1月29日付のスキャッピン第677号によりまして、スキャップが同島を日本の領有から明白に排除したこと、それから更に同島はマッカーサー・ラインの韓国寄りに置かれておること、即ちこれらの2つの事実は同島に対する韓国の要求に同意し、これを確認するものであって、何ら議論の余地のないものであることを日本政府に想起せしめたい、こう言っておるのであります。

我がほうといたしましては、当然これに対し直ちに反駁することができ、又その必要があったのでありまするが、あたかも日韓会談の進行中であったので、それがための適当な時期を待つことといたしておったのであります。然るに4月末に至りまして日韓会談は停頓となり、一方講和条約の発効も間近に迫りましたので、それ以前に本件に関する我がほうの主張を韓国側に表明して置くほうが適当と認められましたので、4月の25日付韓国代表部宛に口上書を以ておおむね次の通りのことを申送ったのであります。

即ち竹島は従来より日本領であって、韓国側の主張は次に述べる理由によってこの事実に何らの変更を加えるものでない。

第1に竹島は現に島根県穏地郡五箇村の一部である。

第2にスキャッピン第677号は日本政府が竹島に対して政治上、行政上の権限の行使又は行使を企図することの停止を命じたにとどまっておりまして、竹島を日本政府の領域から排除したものではない。現にその覚書自体におきましても、この覚書による日本の定義が、ポツダム宣言の第8項に述べられておる諸小島の最終的決定に関する連合国の政策と解してはならない旨を断っておるのであります。

第3にマッカーサー・ラインを規定した覚書自体においても、マッカーサー・ラインは国家統治権、国際的境界、又は漁業権の最終的決定に関する連合国の政策を表明するものではない旨が断られておるから、竹島がマッカーサー・ラインの韓国寄りに置かれておることを論拠とする韓国側の主張は根拠とならない。且つ又マッカーサー・ラインはすでに撤廃せられておるので、この種の論議は全く必要がない。

第4に日本国政府の調査によれば、竹島が数世紀の間独島として韓国の領有にあったという事実はない。

こういうことを主張いたしたのであります。この我がほうの主張に対しまして韓国側は、その後何ら正式の意思表示をして参っておらないのでありまして、爾来今日に至った次第であります。然るに本年2月27日韓国政府国防部が竹島の韓国領有につきまして、米国の確認を得た旨の声明を発表したとの報道が伝えられたのであります。伝えられるところによりますると、右国防部の発表は、独島の帰属について、韓国政府と国連軍司令官との意見が韓国領土の一部であるということの点について一致を見、ウェンライト米極東空軍司令官から、この旨正式通知が届けられ、同時に米空軍による爆撃演習が中断せられた、こういうような趣旨のものであったようであります。

果して米国側がさようなことを韓国政府に通知を行なったものかどうかということは明らかでありませんが、察するに何らかの方法によりまして、米軍の爆撃演習中止の措置を知った韓国側が、一方的にそれを歪曲して自己に有利な宣伝材料として使用したものではないかと考えられるのであります。

この竹島は、日米行政協定に基いて合同委員会の議を経まして、海上演習場として昨年の7月26日の施設区域協定のリストに掲げられたものでありまして、米軍においてこれを演習場のリストから削除するということになれば、当然合同委員会の議を経なければならん性質のものであります。我がほうにおきまして爆撃演習が中止されておるということは、これは承知いたしておりまするが、演習場のリストから削除するということは、未だ合同委員会には上っておらないのであります。そこでこの際はっきりさしておかなければならない点は、竹島は本来日本の領有に属するものであるからこそ、日米合同委員会の議を経て、初めて米軍の使用する海軍演習場のリストに入れられたということであります。従って韓国側の言うがごとく、韓国政府が米極東軍により何らかの通知を得たのが仮に事実であったといたしましても、それた爆撃演習の中止に関するものであって、竹島の帰属とは何らの関係がないものであると考えます。

以上一応本件に関する従来の沿革又交渉の経過、最近における新聞の声明の内容、更にこれに対する我がほうの見解につきまして御説明申上げた次第であります。



[070]
無所属 伊達源一郎
ちょっとお尋ねしますが、竹島は李承晩ラインからどのくらい朝鮮から言うと内側にあるのですか。

[071]
政府委員(外務政務次官) 中村幸八
李承晩ラインの殆んど線すれすれのところにございます。正確にまあ距離を申述べることはできませんが、これもなお調査いたしまして御報告いたします。

[072]
無所属 伊達源一郎
李承晩ラインを日本の領土である竹島すれすれに引いたとすると、そこには非常に大きな問題がなければならん。李承晩ラインの声明に反対の申入れをしたときにこの竹島のことについて言及されておるかどうか。

[073]
政府委員(外務政務次官) 中村幸八
李承晩ラインの宣言に対する我が方の抗議の際に、最後に付け加えまして竹島が李承晩ラインの中にあるが、これは我が方としては絶対に容認できないということをはっきりそのとき伝えてあるのであります。

[074]
無所属 伊達源一郎
この李承晩ラインをそのときに韓国の方ではこれを韓国の領土として入れようとするインテンションがあったのじゃないかと思いますが、外務省はどういうふうに解釈されますか。

[075]
政府委員(外務政務次官) 中村幸八
その点は韓国側の意図ははっきりいたしませんが、李承晩ラインは魚族保護という見地からこのラインを引いておるのでありまして、直接領土というものとは関係ないのじゃないかというようにもとれますが、御説のような考え方も想像できるわけであります。いずれにありやはっきりいたしません。