昭和39年09月10日 衆議院 外務委員会

[063]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
私どもは7月議員派遣として李承晩ラインの視察にまいりまして、その後この委員会で何らかのめどをつけたいと思っておりましたが、いろいろな問題が出てまいりまして、なかなかそのところまで達しておりません。おそらくきょうも十分な時間がないのではないかと思いますが、この問題で1、2点だけ確かめておきたいと思います。

まず第1に、8月26日には6隻の漁船が拿捕されていたわけでございますが、その後2隻返されたというふうには聞いておりますが、聞くところによると、4隻が返されないで、また2隻のうち1隻はそのままになっているということも報道されておりますが、一体どれがほんとうでございましょうか。この点をまずお答え願いたいと思います。

[064]
説明員(外務事務官(アジア局長)) 後宮虎郎
先週の土曜日に、韓国側の代表部より、宝幸丸、それから源福丸2隻を返すという通報がございまして、源福丸のほうは乗員がおりましたものでございますから自力で帰ってまいりました。

前につかまりました宝幸丸のほうにつきましては、乗員がおらないものでございますから、どういうふうにして引き渡すかということについて打ち合わせをやっておりまして、こちらのほうでも絶えず督促しておりますが、現在承知しておりますところでは、まだその前につかまりましたほうの現実の引き渡しは済んでおりません。しかし、返すという意思表示は先週の土曜日には一緒にすでにございます。

[065]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
6隻の船のうちで源福丸だけを先に返したという、その理由はどういうところにあるのでしょうか。2隻返すなりあるいは6隻返すなりということができるはずだと思いますけれども、1隻だけ、しかも源福丸を選んで返したというその理由はどういうところにあるのでしょうか。

[066]
説明員(外務事務官(アジア局長)) 後宮虎郎
特に先方は理由は申しておりませんが、おそらく、宝幸丸と源福丸の2隻が一番最近につかまったものでございまして、とりあえず、これが一番日韓関係を刺激しておりましたので、先方としてはこの2隻をまず返すということを政治的考慮から考えたんだろうと思うのでございます。

そのうちで源福丸のほうは、乗員が36名おりまして、それが運転して帰れるので、とりあえず返した、宝幸丸のほうは、乗員がいない関係で、その物理的な引き渡しの問題についての打ち合わせがまだできていないということで、まだ物理的な引き渡しは済んでいない、そういうことのように了解しております。

[067]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
外務大臣にお聞きしたいのですが、いまアジア局長がはっきりおっしゃったように、この2隻はごく最近で、しかも日韓会談を刺激した、こういうふうなことをおっしゃったわけですが、韓国の外交というのは大体そうだと思うのです。何かやってもらいたいときには日本の国を何かの形で刺激をする、刺激をする場合には漁船を拿捕する、こういう形で自分たちのほうに有利にしようとするのが韓国の外交だと思いますけれども、こういう点について椎名外務大臣はけしからぬことだとお思いになりませんですか。

[068]
外務大臣 椎名悦三郎
もしそういうかけ引きでやるとすれば、まことに拿捕そのものがけしからぬのでありまして、それにまたいろいろな政略的な考え方を加味しておるとすれば、まことにけしからぬと思います。

[069]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
そういうことはお認めになって、それを黙認なさるのですか。

[070]
外務大臣 椎名悦三郎
黙認をしておるわけでは決してございません。

[071]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
先ほど後宮さんがおっしゃいましたように、確かに、この2隻というのは、韓国のほうで自分たちのいろいろな条件を有利にするために政治的に拿捕したということが明らかでございます。