昭和29年03月17日 衆議院 外務・内閣・農林・通商産業委員会連合審査会

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無所属 久保田豊
それではもう一つ最後にお聞きしておきますが、非常に問題になっております李承晩ラインのような問題、特に韓国との関係においてああいう問題は、いわゆる一種の侵略であるとお考えになっているのかどうか。国民の大部分はこれを一種の侵略と考えておりますが、これの措置をどうするかということは第二段といたしまして、将来あれに似たような問題が起った場合の一つの重大問題になりますから、大臣はああいう竹島の問題もしくは李承晩ラインの問題を侵略とお考えになっているのかどうかこの点をお聞きしたい。

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外務大臣 岡崎勝男
これは先ほどの自衛の措置と関連しまして、非常に限定して考えなければならない問題であって、もしああいう問題を侵略と考えれば、自衛措置が講ぜられるわけで、そうしますと、自衛行為というのが非常に広義に解釈されてしまうのであります。

われわれは実際に日本の領土を侵略する行為を侵略行為と考えまして、その場合には必要最小限度の自衛措置を講ずる、こういうつもりでおります。

但し公海におきましてある線を画してその中に権利を主張する等は、これは国際法的に見ましても、またほかのいかなる見地から見ましても、不当の措置には違いありません。これについては平和的な方法におきまして解決すべく、できるだけの手段を講ずるつもりでおります。

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無所属 久保田豊
ただいま李承晩ラインの問題は、いわゆる領土に対する侵略でないというお話でございましたが、私どものところに入っている、特にあそこでもっていじめられた漁師からの報告によりますと、あそこでもって日本の船をつかまえたり、おっかけている船は、これはアメリカから韓国に引渡され、しかもそれがどこで修理をされ艤装されているかというと、日本の佐世保である。この事実を見て来て漁師は非常に憤慨している。今度の協定の第1条に、他国に対しましてもいろいろの装備、資材、役務その他のものを提供するという一項がございますが、これは事実上このように履行されるのかどうか。

また大臣は、李承晩ラインでもって日本の船をいじめり、つかまえたりしている船が、アメリカから向うに譲られたもので、それを佐世保で修理し補修しているという事実がないというのでございましたら、私どもの方で証拠を出してもよろしゅうございます。証人を出してもよろしゅうございますが、これらが事実かどうかという点について御調査になったことがあるかどうか。御調査になったことがありますれば、はっきりした調査の結果をひとつ聞かしていただきたい。

一般に私どもそんなことはあり得ないことだと考えております。第1条にもある通り「援助を供与する政府が承認することがある」云々、こういう協定になると、今後李承晩ラインのような問題があっちこっちに起きはしないか。その都度それらに対する艦艇なり武器というものを、日本側がアメリカを通じてなり、あるいはそうではい国を通じてこれを提供する危険が非常に出て来る。これでは国民感情もなかなか納得いたさないと思いますが、こういう事実を御調査になったことがありますかどうか、またそういうことは今後しないというのかどうか、この点を明確に御答弁をいただきたい。

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外務大臣 岡崎勝男
時間がありませんので詳しく申し上げられませんが、今までの久保田君の御意見にはことごとく私は反対でありましたが、この点だけは賛成であります。御意見の通りでありまして、もしそういう種類の船を日本が修繕するならば、これはおかしなことになる。修繕等はいたさないのが適当であろうと考えております。

過去において、こういう問題が起りました前において、修繕した事実はあると思います。またこういう問題が起っておっても、直接にそういう方面に使用されるかどうかわからずに、修繕した事例もあったかと思いますが、実はこういう点については、国際関係もあり、また日韓問題は平和的に処理しようと努力しておりますから、あまり問題をむずかしくいたしたくないけれども、そういうことはMSAの関係の問題でも起り得ないと限りませんが、そんなことはめったにないと思います。しかしそういう種類のことは日本としてはやるべきことでないと考えております。

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無所属 久保田豊
そうしますと、過去においてはあった、こういうわけですな。

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外務大臣 岡崎勝男
こういう問題が起る前には、当然あったと思います。