昭和30年06月11日 参議院 予算委員会

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日本社会党(社会民主党) 松浦清一
この領海、公海の問題について関連をして、これも外務大臣にお尋ねをいたしますが、27年の1月に朝鮮の李承晩大統領が海洋主権宣言というものを一方的に出して、そうして李承晩が考えた、指定をした線以内に日本の漁船は入ってならぬ、船は航海してはならぬといういわゆる李承晩ラインというものを引いたのです。

それから28年の9月になってから、それまでは非常に漁業関係についての朝鮮側の態度はゆるやかであったが、28年の9月には、これから10日以内に李承晩ライン以内におる日本の漁船は全部退去しろ、もし退去しなければこれは拿捕する、こういうことを言って、向うの艦船がその日になって残っておる日本の漁船を拿捕した事件があるのです。御記憶であろうと思います。その問題について、その後の交渉の経過は一体どういうことになっておりますか。

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内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
領海に関して日本側の見解は先ほど申し述べました通りでございます。これは北洋であろうとまた日本海、朝鮮近海であろうと、その点は日本の立場は変りはございません。従いましてこれに矛盾する外国の行動については、当然これは外交交渉の題目になるわけでございます。そこで韓国との間においてもこの問題が取り上げられておるわけでございます。

しかし韓国との関係は、全面的に一つ何とか韓国との関係を正常化したいという考え方を持って、ずいぶん長い間内面的に交渉を進めておったのでございます。しかし不幸にしてこの交渉は今日まで成功しませんでした。そうして韓国との間の現状は、必ずしも交渉に有望な雰囲気ではないのであります。しかしそれでも重要な隣国との関係でございますから、でき得るだけ空気もやわらげて、そうして交渉を進めて行くように仕向けて行きたいと思うて、目下いろいろ苦心をいたしておる状態でございます。

将来の見込みについては、まだ申し上げられるいい見通しも持ちませんのを非常に遺憾といたします。しかしこれはあくまで忍耐をもって、そうして隣国との関係を正常化いたしたいという方針を変えずに進みたい、こう思っております。

従いまして今の領海の問題も実は韓国との間に解決を見ないし、また今その問題を、すぐ解決ができると、こう申し上げられる域には達しておらない次第でございます。

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日本社会党(社会民主党) 松浦清一
李承晩ラインの内容、範囲については外務大臣御承知だと思いますが、とにもかくにも領海3海里どころの騒ぎではなくて、済州島から50海里も南の方に寄った所にその南端の線があって、そうして東の方は竹島をぐるっと、ひょこっとへこまして囲んで、李承晩ラインというものが引かれておるわけです。そういうものができてから、この付近で操業しておった1700隻という漁船が、朝鮮海域から追っ払われてしまって、とほうにくれているというのが、この付近を漁場とする日本漁業の実情です。

その問題が起ったときに、前の吉田内閣時代に岡崎外務大臣がこちらの金公使ですか、外交機関を通して口上書とか何とか称するものを2回か3回出して話をしておるということを聞きました。しかしその後、あなたが外務大臣になられてから具体的にどのような交渉をされておるかということについては、寡聞にして私は知らないのですが、具体的にどのような交渉をされたか伺いたいと思います。

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内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
その問題は東京において韓国の代表部、今、公使館と称しておりますが、代表部と外務省との間に絶えず交渉をいたしておる状況でございます。