昭和29年02月20日 衆議院 予算委員会

[126]
自由党(自由民主党) 山本勝市
情報の伝えるところによりますと、今朝6時ごろに済州島の付近で、わが海上保安庁の監視船「さど丸」が機銃掃射を受けた上に、暴力をもって拿捕されたということが伝わっておりますが、この際関係当局からその実相をできるだけ詳細に御説明いただきたい。

またこれに対してどのような処置をとられたか、またとろうとしておられるか、これまたそれぞれの関係当局から御説明願いたいと思います。

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説明員(海上保安庁長官) 山口伝
お答えを申し上げます。

巡視船「さど」の連行事件でございますが、巡視船「さど」は、2月16日10時門司を出港いたしまして、済州島西方の特別哨戒に従事いたしておりましたが、今朝6時30分農林漁区294区中ほど、すなわち済州島から見ますと、西南西方約50海里の地点でございますが、その地点におきまして韓国の警備艇P38号、これは韓国の沿岸警備隊の船と思われますが、これより銃撃を受けました。

さらに横づけを要請されて、7時ころ横づけをいたしまして、「さど」の船長並びに機関長は整備艇に移乗して、先方との間に会談をいたしましたが、向うとしては「さど」を連行する旨発言し、種々交渉いたしましたが、翻意をいたしませんで、8時先方の警備艇の乗員7名が「さど」に移乗して参りまして、「さど」の乗組員20名を先方の警備艇に移乗方の要請があったわけであります。8時2分ごろ「さど」の乗組員に対して向うが後甲板に集合を命じました。そこまでの報告がございまして、それ以来「さど」からの通信は絶えたのであります。

たまたまその付近に当方の巡視船「くさがき」がおりましたが、これはこの通報を受けまするや、ただちに現場へ直航いたしまして、8時15分ちょうど先方との間6海里程度の距離に、このわが方の「さど」並びに向うの警備艇を視認いたしました。8時39分「さど」が針路約90度をもって済州島の方へ向って連行されつつあるのを現認いたしたわけであります。このくさがきは9時5分、これも小銃2発の射撃を受け妨害を受けましたが、9時15分なおこれに追尾して折衝をいたしましたが、警備艇からは応答がなくて、遂に折衝はこれ以上不可能と認め、9時45分、第七管区海上保安本部長――これは門司に駐在する地方の出先機関の長でありますが、この指令によって一応現場から離脱いたしたのが、今日まで入っておる報告でございます。「さど」の大きさは450トンであります。本来は新潟の海上保安部の所属でございますが、東支那海の特別哨戒に特別派遣を受けておる船でございます。

これが対策でございまするが、さっそくこの情報を外務省にも入れまして、口頭でまずもって韓国のミッションに対して厳重なる抗議を申し入れ、船体並びに乗組員の即時釈放等の交渉にかかっていただきました。われわれの方といたしましては、現在の警備の状況は海難が非常に多く、あるいはまた昨今浮流機雷が非常に多くなっておりますが、でき得る限りしぼりまして、現在ではおよそ20隻くらいの巡視船が、交互に5隻程度現場に出て、水産庁の監視船と相提携して、現場の操業の維持並びに安全保護ということに努めておるわけでございます。ごく最近にさらに一段とこの警備を効果あらしめるために、門司の七管区の中に両方の合同本部をつくりまして、民間の対策本部とも随時連絡して、一層の効果を期しておったやさきに、かような不祥事件が起きたので、まことに遺憾に存じております。以上経過を申し上げました。