昭和33年07月08日 衆議院 農林水産委員会

[078]
日本社会党(社会民主党) 赤路友藏
概略拿捕の状況の御報告を願ったわけでございますが、人命に関係がなかったということは非常に幸いだったと思いますし、保安庁の方でもよくやっていただいたと思います。ただ、保安庁「いすず」の観測によりますと、拿捕された地点がライン外8マイルの地点にあり、明らかにこれは不法な拿捕であります。よしんば、かりに李ライン云々ということを度外視いたしまして、かかる行為は許さるべき行為でないと思うのです。

特に、私の方に入りました情報によりますと、韓国船が当初無灯火でこの漁船集団の中につっ込んできて最初に接触したのは第七十六照丸、この第七十六照丸には漁獲物は何ら積んでいなかった、第二星丸の方は漁獲物を7500貫ほど積んで長崎の方へ帰る準備をしておった、こういう状況から考えてみますと、これは単なる拿捕であるというだけで済ますべき行為でないと思う。私をして率直に言わしめますならば、最初接舷した船は何ら漁獲物がなかった、そして漁獲物を満載した船を拿捕するということは、これは海賊的行為です。しかも、船員が2名海の中に飛び込んで救助を受けたということでありますが、その船員に対しても銃で撃っておる。

こういう行為はまことに遺憾であると思うのです。現在日韓会談が進行中であります。こういうように日韓会談が再開され進行しておる過程においてこういう不法な行為が行われたということは、まことに遺憾至極なことであると思うのです。従来のケースと同様でありましょうが、特に今回のケースにはわれわれ非常にふんまんを感じるものがあるわけです。外務省の方ではこの事件についてどういうふうに韓国側に御交渉になったか、その経緯を一つお聞かせ願いたい。

[079]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
お話のごとく、公海上におきまして――日本政府といたしましては、李ラインの内であろうと外であろうと、公海上で操業中の漁船の拿捕につきましては、違法として、認めていないわけであります。ことに、今度の第二星丸の拿捕は、李ラインの外8マイルの附近で行われた、しかも日韓全面会談中に行われたということは、私どもまことに遺憾であると存じている次第であります。

この事件が起りまして、海上保安庁を通じましてこの事実を確認いたしましたので、外務省といたしましては、直ちに7月1日付で、正式の文書をもってまず抗議を発しました。その内容は、今の事実を述べるとともに、第1に、公海上で操業中の日本漁船を拿捕したことは絶対容認ができないということ、第2点といたしましては、今回の不法行為に対して厳重抗議を提出するということを述べて、直ちに第二星丸を乗組員とともに即時釈放送還すべきこと、第3点といたしましては、将来この種不法行為の再発を防止するため有効適切な措置を講ずること、第4点といたしまして、損害に対する賠償要求の権利を留保すること、この4点でございます。同時に、私も韓国代表部の柳公使を外務省に招致いたしまして、この趣旨を口頭で述べるとともに、即時釈放を要求しております。その後も、会ったたびごとに抗議を申し述べている状況でございます。