昭和29年03月31日 衆議院 本会議

[032]
自由党(自由民主党) 福田篤泰
強盗を根絶できない以上は、自分は戸締りのための錠前を買うのはごめんである、自分の家の用心は他人様にお願いしておいて、飯だけは腹一ぱい食べたいというような横着にしてかってな主張は、天国はいざ知らず、このきびしい世の中では通用するものではございません。(拍手)

かかる無防備中立論、防備しないで、まる裸になっていた方が安全であるとの議論となるわけでありますが、スイスの実例は、現実の国際情勢下におきましては、いかにこの議論がばからしいものであるかを証明いたしております。

御承知のごとく、ヒトラー総統がイタリア作戦のためにその機動部隊を最短距離であるスイス領内を通過せしめんといたしまして最後通牒を突きつけたときに、スイスは、これに対し、人口の約1割に当る70万を総動員して戦線に配置し、全領土を武装化して、これを実力をもって防ぎ、遂にその光栄ある中立を守り抜いたのであります。

ことに、われわれは、最近において、わが国自身竹島問題及び李ライン問題によって不法なる暴力の前にこれを払いのける正義の力のない祖国のみじめな姿をまざまざと見せつけられたばかりではありませんか。無防備中立論こそは、きわめて危険にして無責任なる亡国論と称すべきであります。(拍手)