昭和29年03月06日 衆議院 外務委員会

[046]
自由党(自由民主党) 福田篤泰
次に先般日本の国内にも相当大きな反響を呼びましたわが国の巡視船「さど」に対する不法射撃事件であります。これは国際慣例からいっても、国際法の法的立場から申しましても、だれが見ても李承晩政権のきわめて不法なる射撃であり、拿捕であります。

これは昔から一つの国際間においての重大な紛争の種にもなり、公船に対する不法射撃あるいは拿捕は、過去の歴史におきましても、戦争開始の原因にもなった実例があるのでありまして、重大な問題であります。

日本が占領下であるならばいざ知らず、独立をかち得た今日におきまして、このような他国による重大な侮辱を与えられたことは、われわれとしても、この処置につきまして、政府に対しましてもとうていなまぬるい態度では見ておられないのであります。

これについてはたして李承晩政権から正式の陳謝の意を表して来たかどうか、またわが外務省におきまして、正式に文書――これは重大な問題でありますから、おそらく口頭でないと思いますが、文書をもって在日金公使あるいはその他正当なる機関に、厳重な抗議を申し込まれたかどうか、並びにこれに伴う損害賠償の要求権を留保されたかどうか。ただ返したからそのままほっておくというようなことは、長いものに巻かれろ、結局力の強いやつにはどんな無理をされても泣き寝入りをするというような、きわめて卑屈な国民感情を植えつけてしまいますので、本件は重大な問題であります。

李承晩ラインもまだほとんど解決の見込みがつかない今日におきまして、こういう明瞭なる不法行為に対しまして、独立国として日本の外交当局がとられた処置、並びに相手国の、加害国の李承晩政権のそれに対する回答その他の処置につきまして、御回答をいただきたいと思います。

[047]
政府委員(外務政務次官) 小滝彬
海上保安庁の巡視船が向うへ連れて行かれたという報かありました当日、さっそく午前中奥村次官が金公使を招致いたしまして、厳重な抗議をし、すみやかに船を返還すると同時に、今後こうした事件が再発しないような十分な措置をとるように申しつけ、かつまた損害賠償を請求する権利を留保する旨を申し渡したのであります、その結果、また同時に友好国の方であっせんをした関係もあったかとも思いますが、韓国側におきましても、即日日本側へ返還するという措置をとったわけであります。しかしまだ陳謝の意思表示というものはございません。

この事件の起りました当日も、衆議院の予算委員会で私から申し上げました通り、外務省といたしましては、ただ口頭で申し述べるのみならず、文書でもって厳重な抗議をするということを申し述べたのでありますが、船及び乗組員の返還につきましては、即座に先方が当方の申入れを聞き入れたので、このあとに出すところの外務省の抗議は、もう少し捕えられたときの状況及びそのときにおける船舶の位置というものを詳細に調査した上で、その調査の結果に基いてする方がより有効であろうと考えましたので、そうした面を今日までいろいろ調査し、すでに先方に対して陳謝を要求し、またこうした事件が再発することを防止するのに万全の措置を講ずべきこと、及び日本側としては損害賠償要求の権利はまだこれを留保するものであるという趣旨の申入書も作成いたしておるのでありまして、これは近日中に韓国側に手交する手はずになっておる次第であります。