昭和32年03月29日 参議院 予算委員会第二分科会

[456]
日本社会党(社会民主党) 海野三朗
今度は潜水艦のことをお伺いしたいのでありますが、ノーチラス号、原子力潜水艦、あれは今もうアメリカで作って試験もしておるようでありますが、原子力潜水艦、あれを供与してもらうお考えはないのですか、どうなんですか。

原子力潜水艦ノーチラス号を、この間私あれを見ましたが、りっぱな写真ができておるのです。これがあれば大へん便利です。どうなんですか、それに対しては。

潜水艦については、日本のあの潜水艦ばかり考えていないで、ノーチラス号のような、そういう原子力潜水艦を供与してもらいたいというようなお考えはありませんか。

[457]
防衛庁長官 小滝彬
向うでやっと一ぱいできただけのものでありまして、とても供与してもらうことは期待できませんので、要求しておりません。

しかし原子力潜水艦は、海野さんの方が専門家でありますけれども、これは水上に浮ばなくともよろしい、そうしてほとんど無限の航続力を持つ、これは場合によっては非常に攻撃的な武器と見られる場合もあるかもしれませんが、私はいつも国会で申しておりますように、自衛力にも限界があるし、非常に長距離の、向うに出て行くというようなものを日本が持つべきものであるかどうか、私はそういうものは持つべきでないというような、この見解からいたしましても、今要求する気持は持っておらないのであります。

[458]
日本社会党(社会民主党) 海野三朗
それでもう一つお伺いしたいのは、朝鮮の李承晩ラインのところで、日本の漁船が始終取っ捕まる。ああいう際には、防衛庁の方でどうですか、少し敢闘をしてくれたらどうかと思うのですが、どうですか。

[459]
防衛庁長官 小滝彬
社会党の政策としては、社会党ではそういうふうにお考えになるかもしれませんが、私どもは、まあそういうことは平和外交によってできるだけ解決したい、こういうふうに考えております。

[460]
日本社会党(社会民主党) 海野三朗
それは違います。漁船がたくさん出ておって、それが韓国の船に引っ張って行かれる、そういう際に防衛庁では、ちょっと待てというくらいのことができないのですか、それを一隻も、いわゆるつまり防衛できないようなことでは、これは非常に心細いと思うのですが、どうですか。

[461]
防衛庁長官 小滝彬
私は非常に海野さんの激励を賜わりまして、よく社会党の海野さんからこういう御意見があったということを……。

[462]
日本社会党(社会民主党) 海野三朗
私は、もう一つお伺いしたいのは、魚とりをしている船に、向うの船が近づいてきて、そうして鉄砲を擬して引っ張って行かれるときに、日本のもう少し、何と言いますか、この間フリゲート艦か何か、木村篤太郎さんが大いにやっておったのですがもう少し自衛力ですよ、それを無抵抗な漁船が引きずられて行くということに対しては、防衛庁はどういうお考えを持っていらっしゃるか、その御所見を承わりたいと思います。

[463]
防衛庁長官 小滝彬
ただいまのところ、海上保安隊の方にも武装した船もございます。しかしそれが、そういう際において発砲するとか、あるいは海上自衛隊がそれの援助に行くべきかどうかということにつきましては、私どもは慎重に考えなければならぬところがあると思うのであります。

まことにお考えはごもっともでありまするし、また、そういうように国家の世論というものが、全部与野党を通じて動くということになれば、さらに検討しなければならぬと思います。

[464]
日本社会党(社会民主党) 海野三朗
私が伺うのは、そういうふうに、つまり罪なくして他国に侵されるときに云々と、この前言ったでしょう、岸総理大臣は。これはもう罪なくしてやっている、李ラインに入っていない船まで引きずって行かれておるのじゃないか。そういう際には、発砲せよというのではないのですよ。そういう際にはもう少し防衛庁が、たまを用いないで、これを引きずって行かれないようにしてくれなければいけないのじゃないかということを私は言う。

何も発砲しろということを言うのじゃない、けんかしろということを言うのじゃない。つまり無抵抗の漁船が引きずって行かれることを考えると、もう少し……、防衛庁、何しておるかと私は思うのですがね。私は戦争しろというのじゃないのです。そこをもう一ぺんお伺いしたい。

[465]
防衛庁長官 小滝彬
海野さんは、こういう不当行為は直ちに実力をもって排除しろというお考えのようでありますが……。

[466]
日本社会党(社会民主党) 海野三朗
いや、そうじゃない。

[467]
防衛庁長官 小滝彬
それも一つでありましょう。しかし外交交渉とか、あるいはそれもなかなかいかない場合には、司法裁判とか、いろいろございます。こういう事件が起ってくるということは、まことに遺憾なことでございまして、目下せつかく外務当局でも非常な努力をいたしておるようでございまして、こういうことが今後絶対ないように私ども希望し、そのために努力したいと考えております。

[468]
日本社会党(社会民主党) 海野三朗
私は今重ねて私見を申し上げておきますが、何も武力に対するに武力をもって対抗せいと言うのじゃなくて、無辜の漁民が引きずられて行く際に、そういうふうなことこそよく警戒をしておって、引ずって行かれないように、武を用いないで、そういうところを世話されるのが防衛庁の本来の任務じゃないかということを私は思っておる。

(「にらみをきかす」と呼ぶ者あり)

うん、にらみをきかすということだ。

[469]
防衛庁長官 小滝彬
海上保安庁の船舶が向うに出ておるのも、また水産庁の監視船が出ておるのも、そういう趣旨でございまして、決してそういうことの起らないようにいたしております。

[470]
日本社会党(社会民主党) 海野三朗
そういう際に、防衛庁はかまわないのですか、そういうことに。どうなんですか。

[471]
防衛庁長官 小滝彬
防衛庁の方では、自衛隊は自衛隊法で指定された任務を遂行するものと考えております。

[472]
日本社会党(社会民主党) 海野三朗
しからば私がお伺いいたしたいのは、防衛庁のそもそも任務は何ですか、私はその任務を伺います。いわれなくしてわが国土を侵すとか、いわれなくして危害を与えられた際にこれを防衛するのだと、総理は言っておる。

ところが今の漁船の場合、それじゃ防衛庁の目的にかなわないじゃないですか。私はそういうふうに思うのですが、どうかそこのところを一つ納得のいく御説明を願いたい。これは実際防衛庁の任務です。

[473]
防衛庁長官 小滝彬
これは自衛隊法にもありますけれども、防衛庁設置法の第4条を読みますと「防衛庁は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とし、これがため、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊……を管理し、及び運営し、並びにこれに関する事務を行うことを任務とする。」というので、その第5条に詳細な規定がございまして、直接間接の侵略に対し、わが国の国土を防衛するとか、あるいは災害派遣をするとか、あるいは土木関係のことについても、委託を受けてこれを実施するとか、詳細規定がいたしてございまするので、この規定に従って私どもは私どもの行動を律して行きたいと考えております。

[474]
日本社会党(社会民主党) 海野三朗
ただいまの御説明は御説明と反するのじゃないかと思う。いわれなくしてわが国土を侵す。そういう際に国土の安全を保つのだということが今条文にごさいましょう。私はその漁船がいわれなくして引っぱって行かれる、李ラインに入っていなくとも。そういう際にちゃんとこれを防衛なさるのがあなたの御責任じゃないか。それは防衛庁は防衛庁の任務であるからといって何が任務ですか。

ただ鉄砲だけで、日本に上陸でもしてこようというようなときこそ防衛されるのかどうか、私は漁船を守ってやることも防衛ではないかと思うのですがね。あなたはどういうふうにお考えですか、海上保安隊は何のためにあるのですか。

[475]
政府委員(防衛庁防衛局長) 林一夫
ただいまお話のように、海上における漁船の保護というようなことは、第一義的には海上保安庁あるいは水産庁の監視船がこれを保護するという建前になっております。このように海上保安庁なり、あるいは水産庁の監視船、こういうようなものにおいてどうしてもこれを保護することができない。事態が収拾できないというような場合においては、これはその必要の場合においては自衛隊の派遣をあれすることもできるという規定はあるのです。第一義的には海上保安庁なり、これらの治安機関が保護をするという建前になっております。

[476]
日本社会党(社会民主党) 海野三朗
もう一つ私は最後に伺いたいのは、その海上自衛隊というものがもう少しにらみをきかしさえすれば、1000何百人も朝鮮に引っぱられて、わが同胞がそんなふうになっておるということを聞いて、防衛庁としてはのほほんとしてはいられないじゃないか、これはそういうときこそ、わが国土を、いわれなくしてわれわれの同胞を引きずって行くというようなときには、もう少し本来の任務に立ち返ってお考えにならなければならないと私は思う。

ただいま長官が読み上げなさったように、その条文をよく考えてみると、これは私は入ると思うのですよ。そういうことは一切かまわないというお考えでありますか、防衛庁長官どうなんですか。

[478]
防衛庁長官 小滝彬
日本の領土に対して直接侵略があって、そうして国会の何があるというようなときには、そういう防衛出動をするということもできる。こういうことになっておるのであります。その際にはそのときの事情もよく考えなければなりません。ただいまの御趣旨はよくわかりましたので、拝聴をいたしておきます。