昭和30年11月01日 参議院 内閣委員会

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日本社会党(社会民主党) 松浦清一
私がお伺い申し上げたいのは最近問題にまたなり始めた韓国との漁業問題、本来申しますと外務委員会あるいは農林委員会の所管に属することですが、ただいま外務委員会も農林委員会も開かれておりませんので、外務大臣に御出席を願ったこの機会にお伺い申し上げたいと思いますが、御承知の通り韓国が李承晩ライン、正確に申しますと海洋主権宣言というものを発表して以来しばしばこの問題について私は外務大臣にお伺い申し上げておりましたが、前の岡崎外務大臣時代から、またあなたになりましてからも韓国の一方的な海洋主権宣言というものを日本の政府としては認めない、外交上そういう態度をとって今日に至っているわけです。

ところがこちらが認める、認めないにかかわらず、先方はやはり李承晩ラインというものを引いているのだという建前から、あの周辺に行って漁業をしておる漁船がしばしば捕えられて、9月30日現在で船が103隻、それから船員が582人抑留されたままに放任されているわけです。最近新聞なんかの報道によりますというと、611人ということになっておりますが、この辺がどうなっているか知りませんが、とにかくそれだけの船員が抑留されておって、これを早く返してもらうようにしたい、早く返してくれ、こういう交渉が始まったということが伝えられているわけです。

中川アジア局長ですか、それから在日韓国代表部の柳さんというのですか、参事官との間でその話が進められた。李承晩ラインを侵犯したという向うの一方的解釈に基いて抑留されている582人のうちの220~230名はすでに裁判が済んで釜山の収容所にいる、今まで伝えられているところではそれは返してやるから、大村収容所に収容している330名の韓国人を釈放せい、こういうことを向うが要求をしている、こういうことが伝えられているわけです。まあ後ほど御答弁を伺えばその真相がわかるわけですが、従来の日韓会談とは切り離してこの船の返還、抑留船員の送還等については別に早急に話し合いをするのだという態度をきめたということはほんとうでございますか。

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内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
大体お話の通りでございます。この件については外務委員会でございましたか、私は出席できなかったときに係官から詳細に御説明をいたしたはずでございます。内容は私は今十分記憶いたしておりませんが、数字等はもしお入用ならば十分調べて、差し上げて差しつかえはございません。

そこで全般の問題として韓国との関係はこれは何とか正常化したいということを目標にして、いわば隠忍自重をしてそしてその目的を達したい、こういうふうに進んでいるわけでございます。しかし国交正常化の全般の問題について交渉を続けておったのでございますが、それは十分今日全般の問題について交渉を進めるわけにはいかないことになっております。しかしそうでありますから漁区の問題についてはこれはその問題だけでも一つ何とか救済のできるようにいたしたいと思って、実は一生縣命にやっているわけでございます。

その問題について、大村収容所の関係もお話の通りでございますが、しかし今その交渉の内容を全部申し上げるのはまだ時期でないと思いますが、さようなことで最善の努力をいたしておるつもりでございます。まあさようなことで、どの問題といわず韓国の問題は少しでも解決が進めばそれだけ関係もまたなめらかになるわけでございますから、全体の解決についてこれはいいことだ、こう考えている次第でございます。

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日本社会党(社会民主党) 松浦清一
先方の方から220~230名の者は返すから大村収容所の330名は釈放しろと、こういうことを言っていることは、私は新聞報道だけでお伺いを申し上げておりますがこれはほんとうのことでございますか。

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内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
今その数字をはっきり私は申し上げられません。しかし関連して話し合いがあったということは事実でございます。

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日本社会党(社会民主党) 松浦清一
大村収容所の330人というのは、戦争前から日本に住んでおって、どういう犯罪行為か知りませんけれども、何かをやって収容されておる人たちである。それを韓国が引き取るというなら問題はないわけですけれども、引き取らないままに日本の国内で無条件に釈放されるというようなことは、相当慎重に考えなければならぬ問題だと私は考えておりますが、その辺のところを政府としてはどういう方針で交渉に当っておられますか。

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内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
われわれといたしましてもそれは十分慎重に考えなければならぬと思っております。これは刑の執行のために収容しておるのではございません。刑が執行されたその後の何であります。