昭和32年02月27日 衆議院 外務委員会

[051]
自由民主党 山本利壽
関連して先ほど戸叶委員に答えられたことで、ちょっとわかりかねたところがありますのでお尋ねしたいのでありますが、今度日本人漁夫の釈放と交換に、大村収容所におる者を釈放する。そして今度日韓会談が開かれるまでですか、日韓会談によって何かの結論が出るまでですか、そこのところがわからなかったのでありますが、再び大村収容所にはその間は収容しないという点がありましたが、その点、会談が開かれたらもう収容してもいいのか、何らか結論が出てからというのか、そういう意味と、もう一つは、この収容しないというのは、出てきた者が再び犯罪を犯しても収容しないという意味か、そこらの点が少し不明瞭でございましたので、一つ御説明を願いたい。

[052]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 中川融
これは御承知の通り、日本におります朝鮮人が犯罪を犯しますと、普通の日本人ともちろん同じ、あるいは第三国人とも同じでありますが、刑法のきめるところに従って罰せられるわけであります。それに従って刑を執行するわけであります。

刑の執行を終えて刑務所から出ました者につきまして、そのうちの約1割程度でございますが、悪質の者について強制退去処分を受けまして――行政処分でありますが、これを受けまして強制退去になるわけであります。

ところが韓国側でそれを引き取らないために、これら強制退去者を一時入れております大村収容所に、もう何年もそこに入れたままになっているというのが実情でございます。

従って、今回しようとしておりますそういった人たちの、一時といいますか、この際国内で釈放するということになるわけであります。

これらの人たちが、あるいはそれ以外の人たちでも、さらに犯罪を犯しますれば、これはまた当然裁判にかかりまして刑の執行を受けるということになるわけであります。

しかし新しく刑務所から出た者を、再び強制退去処分の結果、大村に収容するということはしばらく見合せようというだけのことでございます。

それからいつまで見合すかということでございますが、これはそう長い間見合すということはむずかしいけれども、日韓会談が早期に開かれ、しかもその会談においてまっ先に国籍処遇の問題が討議されるということになりますと、その討議の内容として、どういう類の悪質の朝鮮人を今後韓国が引き取るかということがきまるわけであります。そうしますと、そのきまったところに従って今後当然韓国は引き取るということになりますから、それがそう長い期間でないというならは、それくらいまでの間は、日本側で事実上入れないような措置を考えてもいいということになるわけであります。やはり話がきまることが前提になるわけであります。



[057]
自由民主党 山本利壽
そうすると、韓国に抑留されている日本の漁民を帰すというのも、やはり向うでの刑を終えた者の範囲に限られるわけですか。今回は、とにかく今までのは帳消しとして全部帰るわけですか。もし刑を終えた者だけということになると、その数の割合がどういうことになるか、その点たけ伺っておきます。

[058]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 中川融
遺憾ではありますが、今までの話し合いの内容からいいまして、先方としても刑を終えた者だけしか考えておりませんので、その分について至急帰してもらう、こういうことになるわけであります。

なおその数は、今李ライン侵犯のゆえをもって先方につかまりました漁夫の数は、900名を少しこえているのじゃないかと思いますが、大体900名程度であります。そのうち700名程度がすでに刑を終えて、釜山の外国人収容所に収容されているのでありまして、従って大部分の者はこのたび帰される。しかし残った分は、これは比較的最近つかまった人が多いのでありまして、200名程度の者は依然としてまだ残される。

しかし今度のことが解決いたしますと、少くとも刑を終えた人たちは自動的に帰ってくるという、ことになるわけでありまして、従って今までのように、刑を終えた者も全部ストップされて帰ってこないという事態は救われることになるわけであります。その間、一方また日韓会談を開きまして、根本的に漁業問題の解決をはかろうというのが、ただいまの考え方でございます。