昭和28年02月21日 衆議院 本会議

[028]
無所属 大橋忠一
去る2月4日、韓国側によるわが第一大邦丸の漁労長瀬戸重次郎氏を射殺いたしましたる事件は、その影響するところまことに重大でありまして、もしもこれを放置しておきますならば、韓国周辺のあの豊富なる漁場は、韓国のために奪取せられるおそれがあるのであります。従いまして、これは、ただ単に一人の日本人の漁夫が殺されたというような小さな問題ではないのであります。詳しいことは時間がないから説明いたしません。

外務省は、これに対して、韓国側と交渉を開始するということを言っておりますが、私の考えでは、こういう相手に対して口先でもって交渉したところが、とうていらちの明くものじゃないと思っておるのであります。

そこで、私は当局に向って、この際断固として経済的の報復を加えよということを要求しているのであります。

年々韓国から日本に持って来る水産物は、大体10億円内外になっているといわれておるのであります。その中には、日本の漁船から取上げましたところの魚も入りておる。日本から拿捕いたしました船で漁獲をした魚も入っておる。一体、そういうようなものを日本が買うということは、元来おかしいのであります。

従いまして、当然もう少し早くこういうことをやらなくちゃならぬのに、一向やっておらない。そのわけを聞いてみますと、通産省においてこれに反対しているというのであります。どういうわけで通産省が反対しているのか、通産大臣にひとつお伺いしたいのであります。

問題の李承晩ラインなんというものを、もし日本人が認めて、そこに出漁をしないということになったならば、おそらく他の国々も、第2、第3の李承晩ラインというものをつくって、日本の公海漁業というものは滅亡に瀕するおそれがある。これは重大問題である。この重大問題を解決する手段として、日本の船から取上げたような魚の入っているものを韓国から輸入するのを禁止することがなぜ悪い。それを通産大臣にお尋ねしたいのであります。

なお、韓国の魂胆は、この漁場を日本から取上げようというのである。年々約70億円からの漁獲物を、日本の漁船だけでもとっておる。阪神方面の5割くらいの魚はここから来るという豊富な漁場、これを日本から奪取しようとしておる。こういう大きな問題を解決するために、なぜ韓国に対する経済的の報復ができないのか、その点をひとつお伺いしたいと私は思うのであります。

今回日本の船を拿捕いたしましたる韓国の第二昌運丸という船は、もともと福岡県の船であって、日本の船である。それを日本から取上げまして、今度はそれを拿捕用に向うで使用しているのである。かくのごとき暴挙にわれわれが屈従して、あっけらかんと見ておるということになれば、愛国心の高揚も、独立国の誇りもあったものではないのであります。(拍手)

従って、彼らは、この次には対馬をよこせと出るに相違いないと思う。われわれも、もういいくらかげんで敗戦の昏睡からさめて、腹帯を締め直して立ち上らなくちゃならぬと思うのであります。

韓国の公海に対するかくのごとき行動は、明白に海賊行為であります。この海賊行為に対して、日本の官憲は一つも保護を与えておらない。

私は海上保安庁の主局に質問いたしますが、何のために監視船を出しておるのか。よろしく、向うの手繰船くらいがやって来たら、これを撃破して、わが漁船を保護するのがあたりまえである。もし現在の船だけで足らぬというのならば、それをもう少し増強したらどうか、この点をお尋ねしたいと思うのであります。また、わが保安庁は、最近アメリカからフリゲート艦を借りた。借りた以上は、ちっとこういうことで働かしたらどうかということを、私は保安庁長官にお尋ねしたいと思うのであります。

私は、再軍備という問題については、これはなかなかむずかしい問題で、まだ結論が出ておりません。しかしながら、わが漁船が、かくのごとくひんぴんとして、隣邦の韓国、中共や台湾政府からひどい目にあうのを見るとき、やはりある程度の自衛力というものはぜひ持たなくちゃならぬというように考えるようになったのであります。(拍手)

アメリカは、防衛水域というものを、昨年の9月から韓国の周辺に設けたのであります。この問題につきまして、水産委員会で外務当局に質問いたしましたところが、防衛水域はできても、向うの指示に従ってさえおれば、決して操業にさしつかえないという説明であったのであります。しかるに、最近現地のアメリカ海軍当局の言明によりますと、もう防衛水域内に入ってもらっちゃ困るということを言い出しておるのであります。大分外務省の説明と違っておるのであります。これについて、岡崎外務大臣はどうお考えでございますか。ただちにアメリカ側に折衝されて、向うの言い分をただして、やはり防衛水域の中でも操業のできるようにする必要があると思うのであります。

それから、最近新聞の報道によりますと、第一、第二の大邦丸が佐世保に護送されました後に、2日の間アメリカ軍艦のわきに横づけされて抑留をされておった。そして、なかなかその船員が帰って来ないので、われわれ困ったのでありますが、一体、日本を基地とするところのアメリカの軍艦が、日本の船を2日間もとめ置くということが、はたして法律上できるものでありますかどうか。国連軍をおそらく兼ねておるだろうと思いますが、国連軍がはたして日本の船をそういうように抑留することができるものでありましょうか。この点を岡崎外務大臣に私は質問するのであります。

私は、かつて満州国におった者でありますが、関東軍が、いろいろな、かってな行動をやった。それをわれわれが黙って見ているうちに、満州国は遂に第二の朝鮮となってしまったのであります。従いまして、この日本の独立というものは、よほど神経質になって擁護しないと、日本もそのうちに、知らぬ間に第二の朝鮮のようになってしまうおそれがあるのであります。従いまして、こういう点は、外務省においてもよくよくお取調べになって、そうして向うが悪かったならば、断固として抗議せられんければいかぬと思うのでありますが、この点をどういうふうにお考えでありますか。

今や、九州から中国方面の漁民は、朝鮮近海の豊漁場におけるこの韓国側の暴行に対して非常に憤慨しておる。憤慨はしておるけれども、何ともできぬというので、それを押えておるのであります。しかし、もしわれわれがこれをほうっておいて、こういうような事件が繰返されますると、遂にその怒りというものが、もし日本における朝鮮人に向って加えられるようなことになったならば、この大事な日本と韓国の関係はどうなるでありましょう。私は憂慮にたえないのであります。

そこで、外務当局に私は希望を述べて質問を終りたいと思うのであります。本件は、むろん韓国がやったことでありまするが、その背後にあるところのアメリカが大切であります、このアメリカに向って、この際強く交渉をせぬことには解決しない。占領時代のような、へっぴり腰の通訳的な態度を続けておっては、アメリカさんとしても、たよりなく思うに相違ないと思うのであります。私は、よろしく東亜問題は日本がリードする、アメリカをひっぱるくらいの気魂をもって、ある意味においてわが生命線にかかるような重大問題、この抜本的の解決に努力されんことを希望して質問を終りたいと思います。(拍手)