昭和34年01月30日 衆議院 外務委員会

[089]
日本社会党(社会民主党) 大西正道
まず保安庁長官にお伺いいたしますが、去る22日でありましたか、また朝鮮海峡における拿捕が始まったように聞いております。その辺の事情を、私どもも調査をいたしておりまするが、少し説明をお聞きしたいと思います。

[090]
政府委員(海上保安庁長官) 安西正道
22日に、地区といたしましては321区でございますが、第百八十三明石丸と第百八十五明石丸、この2隻が韓国の警備艇から停船を命ぜられまして、つかまっております。昨年の6月以来初めての事件でございます。

ただいま申し上げました321区と申しますのは、いわゆる李承晩ラインと称しておりますラインの外でございます。以上でございます。



[095]
日本社会党(社会民主党) 大西正道
この拿捕については、前にも第二星丸の不幸な拿捕がありました。船と船員もろともに向うに連れていかれまして、いまだに釈放されておりません。これに対しまして外務省の方からは厳重な抗議をしたのでありまするが、何ら効果はない。今回の事件に対しまして外務省といたしましては、口上書をもって抗議の申し入れをされたとも伝えられておるのでありますが、外務省のこれに対する措置をお伺いいたしたい。

[096]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
外務省といたしましては、1月22日の午前に、日本の漁船が2隻拿捕された通知を海上保安庁より受けましたので、当時は必ずしも韓国艇であったかどうかわかりませんでしたが、とりあえず口頭をもちまして直ちに韓国代表部に調査方を要求いたしました。その後大体において韓国艇であるということが確実になりましたので、ただいまお話しの通り、1月26日に正式に口上書をもちまして厳重なる抗議並びに損害賠償請求の権利を留保する旨を通告いたしました。なお私自身も向うの崔参事官を招致いたしまして、この点について注意を喚起いたしたのでございます。

ところが御承知の通り27日に、韓国側から正式の回答がございました。拿捕された地点は、韓国側の言い分によれば、いわゆる李ラインの内側である、従って韓国の漁業資源法に違反したかどでもって拿捕されたのであって、今後日本側が李ラインを侵すようなことのないようにという抗議を受け取ったのであります。

日本側の承知しております情報によりますれば、明らかに李ラインの外で拿捕されたものと信じておりまするが、しかし李ラインの内外を問わず、いずれにいたしましても、公海におきまして拿捕されたという事実というものをわれわれは重視いたしておる次第でございまして、それにつきましては重ねて韓国側に抗議をいたす所存でございます。

[097]
日本社会党(社会民主党) 大西正道
抗議によって一応外交的な処置はとられたわけでありますけれども、この抗議が一向力のないものであるということは、もうこれまでの経験に徴して明らかなところである。第二星丸事件がいまだに解決されていないということが、雄弁にそのことを物語っておる。

こういうことがたび重なっていくということにつきましては、これは重大な問題でありますから、ただ抗議に抗議を重ねるという以外に、この問題の打開のためにどういうふうな積極的な措置が講ぜらるべきか、この点についての見解を承わりたい。

[098]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
御指摘のように、昨年全面会談が開始せられました以後も、そうひんぱんではございませんが、日本漁船の拿捕事件が起っております。ことに第二星丸の事件の際には、私ども強硬に抗議をいたしました。韓国側といたしましては、第二星丸の拿捕事件につきましては何ら実効的措置をとりませんでしたが、事実上今日まで一回も拿捕事件が起らなかったわけであります。今回不幸にも再びこの拿捕事件が起ったことにつきましては、われわれまことに遺憾に存じております。

ただ従来拿捕漁船、拿捕漁夫の処理の問題につきましては、星丸あるいは今度の事件の個々の問題でなく、全体として解決を要する。御承知のように、現に釜山には122人の漁夫が抑留されております。この問題を全体として解決する必要がございますので、せっかく全面会談も開始されておりますから、全面会談の交渉によりまして全般的に解決したいという方針で今日まで進んできたわけでございます。

しかしながら、こういうような事件がまた現在起っておるということになりますれば、この問題の解決について何らか新しい措置を考えざるを得ないのではないかということについて検討いたしておりまするが、今具体的ないかなる措置をとるかということについてまだ申し上げる段階にございません。