昭和27年11月28日 衆議院 大蔵委員会

[011]
自由党(自由民主党) 宮幡靖
水産庁の事務当局のお考えとしては、そう考えるほかはないと思うのでありますが、事実といたしましては、さらに李承晩ラインのほかに国連軍の防衛水域がある。これはほとんど同じような線でありまして、もちろん図上で見ることで、現地の関係はもっと複雑多岐でありましょう。その中におきまして、出漁禁止をされる、あるいは警戒区域の中に入っていいときと悪いときがある。こういうことを勘案して参りますと、いわゆる保険事故というものは非常に増大して来るわけであります。

これに対して李承晩ラインの宣言は、これはもちろん一方的でありまして、国際法の正常なる解釈並びに慣習から言いまして、逸脱しておるものであるということには異論がない。しかしながら、これに対して何らの解釈が与えられず、こちらも原則があるからということで一方的に漁船の出漁を認めておる。こういうことになりますと、迷惑するのは実際の漁民であり、ひいては日本国というものの面目に関する問題になって来ると思います。ただいまのは事務当局の意見でありますから、これを強く追究する意味ではありませんが、一方的な解釈のみに頼らずに、さらに外務省等を通じまして、それぞれ御折衝なさっておるかどうか。

国連軍は大体出漁は禁止したけれども、話合いによりまして、黙認することになっただろうと思うということが、それぞれの漁港に風のたよりのように伝わって参りまして、これを信頼して、防衛水域の中、あるいは李承晩ラインの中に入って行く。韓国の海軍はこれを拿捕するという事実があって、先ほど御説明になりましたように、われわれの方の資料は少し違っておるかもしれませんが、10月27日くらいの現在で142隻くらいが韓国の海軍に拿捕されておる。乗組員は1392人というように推定されておる。このほかに行方不明が20隻くらい、沈没が8隻、未帰還の船もまた10隻ある。死者は6名、行方不明は4名、未帰還者が72名というような重要なる報道が、それぞれの港に伝わっておる。

こういうときに、国際法の精神からいって、また慣例からいって、公海自由の原則が認められただけでは、日本国の漁民を保護する上において、その保護の一つの末端の仕事として保険制度があるわけでありますが、根本的に出漁を保護する点におきまして、私は残念ながら遺憾の意を表さなければなりません。