昭和30年10月20日 参議院 外務委員会

[009]
自由党(自由民主党) 小滝彬
外務省側からぜひ説明していただきたいことは、韓国との関係において、特に日本の漁夫が長い間向うで不当に抑留されておる。それに関しては先方からは大村収容所の問題を云々しておるということが新聞にも報道されておりまするし、また10月15日、土曜日の官報にも、法務省が大村収容所について説明をし、その中には、韓国側からこういうような申し出があったというふうなことをはっきり政府側として発表しておるのですが、これについて係の局長なりから説明さしていただきたいと思います。

[010]
説明員(外務省アジア局長) 中川融
ただいま御質問のありました韓国人で大村収容所に抑留されております者の措置の件でございますが、不敏にして私、その法務省で出しました官報の掲載事項を読んでおりませんので、どのようなことが書いてあったか存じておりませんが、従来問題となりました点を御報告申し上げますと、大村収容所に今1000数百名の韓国人が抑留されております。これはいずれも法務省により韓国に強制退去処分を受けまして、船待ちの者でございます。そのうちの大体1100名ぐらいの者は、これは韓国から不法入国をいたした者でありまして、いわば密入国いたしました者がつかまりまして、それでそのまま退去処分になったという者でございます。それ以外の350名程度の者は、これは終戦前から日本に居住しておりました韓国人でありますが、日本の法規を犯した等の理由のために、出入国管理令によりまして強制退去処分に付せられておる者であります。いずれも日本の法規に基きまして、韓国に退去処分に付せられる者でありますが、韓国側がこれの引き取りを拒否しておりますので、大村収容所にいわばたまっておるわけであります。

韓国側の態度は、そのうちの密入国者につきましては、これは原則として引き取るということでございます。しかしながら最近におきましては、その引き取りが中絶いたしております。なお、終戦前からおりました韓国人で日本の法規を犯した者につきましては、韓国側はこれの引き取りを全面的に拒否いたしております。これは韓国側の理由としては、これかの者がどういうふうな処遇を受けるかということが、日韓間で話がきまらないゆえに引き取らないという態度をとっておるわけでございます。日本側の態度は、これは韓国籍であることは、双方の実際措置あるいは会談における双方の主張というようなことからもう当然はっきりしておる。従って韓国籍である以上は、日本の法規を犯して、それも非常に情状の重い者と、こういう者は当然退去処分に処し得ることが、国際慣例上当然である。従って、協定ができるできないにかかわらず、韓国が当然引き取るべきであるとの主張に立っておるものでございます。この間の意見が合わず、従ってこれが引き取れないのであります。韓国側からはこれを全面的に日本において釈放してもらいたいという申し入れがあるのであります。

なお、これと直接韓国は関連はさしておりませんけれども、御承知のように日本の漁夫でいわゆる李ラインを侵犯して韓国につかまりました者が、先方の刑務所を出まして、なおこれが日本に帰されない。釜山に抑留されておる者がございまして、その数が大体250人ぐらいに達しております。これはすでに長い者はもう10ヵ月ぐらいになるのでありますが、なお日本に帰されておりません。従って韓国側ではそういう日本人を抑留して帰さない。

それでこれは直接の関連ではないとは申しておりますが、われわれの見るところでは、この両者の間に何らかの関係があるのではないか、かように推察をいたしております。実際は関係があるのではないかと推察をいたしております。

日本側の今までの態度といたしましては、この大村に収容されておる韓国人を無条件で釈放するというわけにはいかんというのが、今までの態度でございます。