昭和27年12月13日 衆議院 大蔵委員会

[041]
政府委員(水産庁長官) 塩見友之助
最近における漁船の拿捕につきましては、はっきりと拿捕という形になりますものが3件、そのほかいろいろ数字等が新聞などに載ります場合に混淆して出ておりますけれども、それで短かい時間の間に釈放されたものが2件、臨検を受けましたものが12件というような状態になっております。

一件々々についての詳細を御要求のようでございましたが、それにつきましては主管部長の永野生産部長から御説明申し上げることにいたしたいと思います。



[044]
説明員(農林事務官(水産庁生産部長)) 永野護
講和発効後におきまする韓国関係の拿捕その他の事件について御説明申し上げます。まず時日を追いまして説明する方が大よその大勢は御了解願えると思いますので、そういうやり方で申し上げたいと思います。

講和発効直後におきましては、わが国の漁船も韓国の漁船も、韓国近海におきまして非常に平和に操業いたしておつた実情でございます。従いまして1月に宣言されました李承晩宣言に基く実際の行動というようなものは、全然なかったのでございます。

7月に入りまして、これは日韓間の種々の交渉がほとんど杜絶をいたしたような状態になったのが原因かと推察せられますが、7月に3件の漁船の臨検事件がございました。これは件数で3件でございますが、船の数にいたしますと、6隻の船が韓国の船によって臨検を受けた。そのうち1件につきましては、漁獲物の掠奪を伴っております。

それから8月になりましてこの臨検事件が1件と、それから拿捕が1件起ったのでございます。この拿捕の件につきまして特に御説明を申し上げますと、事故の発生いたしました日にちは8月の14日でございます。船の名前は第五七福丸、トン数は40.51トンの船でございます。この漁業の種類は以西底びき網漁業でございます。この船は韓国側の言い分によりますと、領海を侵犯しておったので拿捕したという言い分でございますが、われわれが乗組員等から詳細事情を聴取いたしましたところでは、この事件が起りました場所は東経127度25分、北緯33度9分の地点でございまして、これは明らかに公海であると考えております。これにつきましては韓国側がこの船を拿捕いたしまして、船長に対しまして領海侵犯をしておったという自認書を強要の上作成いたしまして、これを元にいたしまして、韓国語による一方的の裁判をいたしまして、有罪の判決をいたしておるのでございます。これに対しましてはさっそく外務省を通じまして韓国に対して抗議を申し入れておる次第であります。

8月になりまして、以上の臨検が1件、拿捕が1件あったのでありますが、9月になりましてさらにこの数がふえて参りました。正確に申しますと、9月27日に国連軍司令官によります防衛水域設定の発表が行われたのでございまするが、それまでに、9月の間に臨検の事件が4件、船の数にいたしまして4隻でございます。それから拿捕が2件、船の数が同じく2隻でございます。こういう事件が起っております。そのうち拿捕の事件について申し上げますと、事故の発生いたしました日にちは2件とも9月12日でございます。船名は第二十八海鵬丸という船と、第二松寿丸という船であります。トン数は99.98トン及び38.73トンでございまして、漁業の種類はきんちゃく網漁業の船でございます。これが事故の発生いたしました場所につきましては、なお全部の乗組員が帰還いたしておりませんので、正確に緯度、経度をもって表示することは差控えたいと存じまるが、われわれがこの方面の海域を区分しております農林漁区という区分がございますが、その農林漁区の区分の254区、すなわち済州島の東南の地域でございます。これに対しまして韓国は、先ほどの船と同様に、やはり船長に対しまして領海侵犯をしておったという自認書を脅迫の上とりまして、これに基いて裁判をするという態勢にございます。これに対しましては、いち早く9月15日に韓国に対して返還要求をいたしておるのでございますが、それに対しまして、ちょうど1月を経過いたしました10月15日に、韓国から、あれは領海侵犯であったから拿捕をしたという回答があったのでございます。そこでつまり10月15日回答のありました即日、外務省から、この船が拿捕される際に日本に無電があった、その連絡等によると、絶対にこれは領海の中でつかまったものではない、従ってこれは不当な拿捕であるからということで、この船の返還要求を申し入れて、再び抗議を申し入れてあるのでございます。なおその際に乗組員等の至急の返還ということもあわせて要求いたしましたのに対しまして、10月29日に、乗組員52名のうち36名についてはすぐ帰還させるという韓国側の返事がございました。そして全員が帰って参りましたのが11月6日でございます。従いましてなお残りの16名が帰って参らないのでございます。この件に関する外務省からの折衝はこういう経過に相なっております。

以上が国連軍の防衛水域設定前の事件でございます。その後におきましては拿捕の事件は起っておりません。

それから臨検せられました事件といたしまして、11月10日に第三進漁丸が韓国の船によりまして臨検せられまして、李ラインの外に出るようにということをいわれております。

それから連行事件が2件ございます。これは同一の日でございますが、10月13日に2隻のさばつりの船が韓国の船に連行されまして、釜山に連れて行かれる途中でアメリカの軍艦が参りまして、これを釈放するようにということで、その連行の途中で釈放されて無事こちらへ帰っております。

そのほかに1件だけ、これは韓国の船ではなくて、米英の艦船によりまして取調べを受けた事件がございます。以上でございます。