昭和31年04月13日 衆議院 法務委員会

[017]
自由民主党 高瀬傳
そこで、私は、重光大臣並びに金公使の間に取りきめられたこの了解事項について触れて参りたいと思いますが、なぜ私どもが法務委員会においてこの問題を重視するかという点であります。

それは、すなわち、まず第一に、韓国政府は刑期を終了した日本人漁夫を釈放するという点、しかもこの刑期を終了したというところに問題があるのでありまして、わが方から言えば、あの公海自由の原則に従って漁獲に従事しておった善良なるわが国の国民が朝鮮側において犯罪者として扱われて、しかも刑期を終った者、終らざる者という区別をわが方で承認いたしまして、終った者だけを日本に引き取るということであります。

これは、われわれといたしましても、日本人漁夫が一刻も早くその家庭に帰って生業につくことを希望するのは国民として当然でありますけれども、大臣も御承知のように、かつてこの国会におきまして李承晩ラインについて非常に強硬なる決議をいたして、世論に訴え、また韓国側の反省を促したことは御承知であろうと思うのであります。従って、わが方として、犯罪人でない者を朝鮮側が犯罪人として、しかも朝鮮側の法律から見て刑期の終った者だけを釈放するということは、すなわち、とりもなおさず、常識的に見まして、これは李ラインを一部分わが方が承認したような形に相なるわけでありまして、この点はどうしても国民感情が許さぬ点なのであります。

しかも、一方、なお後の方の取りきめを見ますと、日本国政府は終戦時以前から日本に在住する韓人にして大村収容所にある者を釈放する、こういうことがあります。その前に、密入国者を韓国政府は引き取る、これは当然であります。しかしながら、ただいま読み上げましたところの終戦時以前から日本に在住する韓人にして大村収容所にある者、これは非常な犯罪者であり、日本において犯罪を犯し、刑余者として当然国際法の原則に従って朝鮮に送還せらるべき運命にある連中でありまして、これらがわが方の善良なる漁民と対等の立場において釈放が交換されるという、これはどうしてもやはり公平に見て国民感情を刺激せざるを得ないと思うのであります。

その中で、具体的に言いますれば、大臣も御存じでありましょうが、前科9犯ないし12犯の者が13人、6犯ないし8犯の者が80人、3犯ないし5犯の者が240人、こういうことで、これらの者を釈放いたしますれば、かつても騒擾を起した事件もあり、また、すでに新聞の報道するところによりますと、大村近辺において警官並びに住民が非常に不安の念にかられておるという事実があるわけであります。

つまり、私が問題にするのは、李ラインを一部容認したかごとき感を与えるということと、それから、第一に、わが方から見れば罪人でない者を、明らかに刑余者であり国際法上朝鮮に帰さなければならぬ者と五分の立場で交換するということ、これは非常に問題であろう。



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日本社会党(社会民主党) 猪俣浩三
それから、私は実は十ばかり外務大臣におただししたいことを用意したのでありますが、これは月曜日に回すことにいたします。ただ、宿題として私どもあげ足をとったり言質をとったりしたくないので、責任ある御答弁をいただきたいと思いますので、宿題を申し上げておきたいのは、韓国の軍隊かどうだか知らぬが、いわゆる李ラインを越したものなりとして日本の漁船を拿捕することは一種の侵略行為じゃなかろうか。国際公法の教えるところによれば、侵略とは国土に対するのみならず国民に対する不法な攻撃も侵略だという定義になっておる。そこで、これが侵略だということになると、これは一体日米安全保障条約の前文に触れることじゃないだろうか。すなわち、アメリカがかような行動は積極的にとめるべき責任があるのじゃなかろうかという点であります。これを一つ御考慮願いたい。