昭和28年09月04日 衆議院 外務委員会

[101]
改進党 岡田勢一
今日国家は、災害等に対しましては災害救助法などがありまして、いろいろの補償救済がなされております。これがもし民間の事業関係でその会社のために犠牲になったといたしましたならば、当然その身命を犠牲にした者に対して見舞金あるいは遺族の慰安措置がとられるはずであります。国家といたしましては何も法律ばかりをたてにとってする必要がないのではないか。このような国際紛争のために生命を犠牲にいたしました者に対しては、見舞金の名目であるとかあるいはまた災害に関する補償とは言えぬかもしれませんが、何らかの措置はとれるはずであると私は思うのであります。それくらいのことは政府としておやりになっても大したこともないと思いますが、いかがでありましょう。

それから次にお伺いしたいのは、先般の新聞にもありましたように、国連軍の防衛ラインが撤去されましたが、そのあと韓国は、李承晩ラインは撤回しない、もし韓国の領海内に不法侵入した者に対しては砲撃し撃沈すると豪語いたして発表しております。国際紛争は非常に複雑であって、世界の形勢は重大でありますけれども、われわれ日本人としては、身近に朝鮮が10数個師団の厖大な近代的装備の兵力を持ち、あるいは海軍までも持ち、強硬な態度で日本に臨むということを今日真剣に注目しまた注意せねばならぬと思います。もし今日までの状況のごとく、理不尽にも李承晩ラインなるものを固執いたしまして、韓国の国際法上の距離以上の所であっても、侵犯だと称して砲撃あるいは撃沈の事件が起りましたときには、どうされるつもりでありますか。

それからもう一つは、木村保安庁長官におかれましては、このような事件が頻繁に起りつつあるこの時におきまして、単なるコースト・ガード的の存在である海上保安庁にまかせてお置きになるつもりでありますか。あるいはそれに対して保安庁のお持ちになっておられます海上警備隊を何らかの形で配備をされておりますか、あるいはまた配備をせんとしつつありますかあるいはまた一朝有事の際がいつ起らないとも限らないと私は思いますが、その場合に備えて、アメリカ極東海軍等にあらかじめ連絡をとられまして、一朝有事の際の国民の生命、財産の保護に備える準備をなさっておられましょうかどうか。この3点をお伺いしたい。

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外務大臣 岡崎勝男
初めの2点についてお答えいたします。

第1は、今の以西底びき等の人々の補償の問題でありますが、御意見の方は水産庁等に連絡いたしまして、できるだけ考えてもらうことにいたします。

それから第2のたとえば李承晩ラインと称するものの中で乱暴なことを先方が働いたらどうするかということにつきましては、われわれといたしましては、国際的な紛争については、少くとも武力に訴えないで平和的手段で解決するというのが、憲法の基本的精神でありますので、あくまでもこういう問題は平和的に解決いたすつもりでおります。

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保安庁長官 木村篤太郎
第3点についてお答えいたします。この問題は、朝佐々木君の御質問に対してお答えしたはずでありますが、申すまでもなく警備隊は、海上保安庁その他の手によってまかなうことのできないような重大な事件が起った場合に、これに対処するのは当然であります。今後さような事態が起りまして要請がありますれば、すぐ出動いたしたいと考えております。

しかしもとよりこれは憲法その他によって非常な制約があるので、それを無視してやるということはできないのであります。その範囲内においてできるだけの処置はいたしたいと考えております。