昭和30年07月18日 衆議院 農林水産委員会

[080]
自由党(自由民主党) 田口長治郎
私は韓国抑留漁民の早期送還の問題と李承晩ラインの問題につきまして、外務大臣に1、2お尋ねをいたしたいと思うのであります。

昭和26年(※27年)1月に李承晩が韓国周辺にラインの設定をいたしまして、このラインの設定につきましては、事公海の問題でありますし、はなはだしきは沿岸から200マイルも離れておるというところにラインをしておるのでありますが、これは国際法上から申しましても、わが方としては断じて認めることのできない線と思うのでありますが、これに対しまして外務大臣はいかような御見解でおられるか、お伺いいたします。

[081]
内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
私もさように思います。

[082]
自由党(自由民主党) 田口長治郎
そういたしますと、あの海域におきまして日本の漁業者が現在漁業をしておりますことは、日本漁民の正常なる操業であり、韓国に対して何も気がねをするような漁業ではない、こういうふうに私らは考えておるのでございますが、これに対しまして韓国政府は、しかも公海の上で正常に仕事しておる日本の漁民を拿捕抑留いたしまして、29年の7月以降のことを考えてみましても、いまなお276名の日本の漁夫が韓国に抑留をされている。

しかも一昨日以来韓国からの帰還者を参考人として当委員会においていろいろ調べてみたのでありますが、食事にしても、居住関係にしても、あるいは衛生方面にしても、病気の場合の治療にしても、まことに言語道断でございまして、人道的にどうしても許されないような状態において抑留されておる。当然仕事をして差しつかえない場所で拿捕されて、そうしてさような状態で抑留されておる。



[084]
自由党(自由民主党) 田口長治郎
この抑留されておる276名の内訳を調べてみますと、この中にはすでに裁判の決定による服役が終って解放されている人や未成年者がまだ100人も残っておるということであります。すでに刑の終った者や未成年者をなおとめておく、しかもその期間はもう6カ月、8カ月、1年にならんとしておる。こういうことが日本の国民としてはどうしてもわかりません。



[158]
自由党(自由民主党) 田口長治郎
私は、この際韓国抑留漁民早期送還対策等に関する件につきまして、各派共同をもって本会の決議をいたしたいと思うその動議を提出するものでございます。

理由につきましては、ただいままでの質疑応答によってはっきりしておりますから、案文を朗読いたします。

韓国抑留漁民の早期送還対策等に関する件

現在韓国によって、李ライン侵犯のかどで昭和29年7月以来拿捕抑留されている本邦の漁船乗組員は、276名に上っているが、そのうち韓国側の一方的裁判によって体刑を課せられ、既に刑期を終えて釈放された者及び未成年者約100名すら未だ送還されていない。然も仄聞するところによれば、悲惨極まる抑留生活を続けておる由である。これは国際法上の違反であるのみならず、人道問題上許すべからざる事である。

よって政府は、速かにこれが解決のため適当な措置を講ずべきである。

右決議する。

どうか皆さんにお諮り願いたいと思います。

[159]
委員長代理 鈴木善幸
ただいまの田口君の提案に関し、御意見があれば発言を許します。

〔「なし」と呼ぶ者あり〕

[160]
委員長代理 鈴木善幸
御意見がなければお諮りいたします。田口君提案の韓国抑留漁民の早期送還対策等に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

[161]
委員長代理 鈴木善幸
御異議なしと認め、さよう決しました。

なお本件の議長に対する報告並びに政府に対する送付等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

[162]
委員長代理 鈴木善幸
それではさよう取り計らいます。