昭和37年08月23日 衆議院 外務委員会

[057]
日本社会党(社会民主党) 細迫兼光
李承晩ラインの問題でありますが、私のところにも方々からいろいろな手紙が参ります。社会党が日韓会談の打ち切りを主張しているものでありますから、どうぞ反対しないでもらいたい、李承晩ラインの解決という非常に望ましいことが含まれておるのだから、あれには反対しないでもらいたいというような手紙が続々参っておるのであります。

しかるに、大平外相の高い次元からの正常化というその中には、李承晩ラインの撤廃ということが置き去りにせられるではないかという印象を受けるのでありますが、これは、穂積君への御答弁によって、同時に解決を企図しておるということで、了解をいたしましたが、請求権につきまして、放棄した日本の請求権、これは考慮に入れるべきことをやはり主張なさるかどうか。

それから、わが方の請求権といたしまして、不法にわが権利を侵害した李承晩ラインの問題、これは、権利の侵害による、すなわち不法行為による損害、これを賠償してもらう権利があると私は思うのです。10年にわたる得べかりし利益の損失は莫大なものがあると思います。これらを主張なさるお考えがあるかどうかを承りたいと思います。

[058]
外務大臣 大平正芳
先ほど穂積先生の御質問にもお答えいたした通り、請求権という問題に関する限りにおきましては、合理的な根拠があるものでなければならぬと思っております。ただ、そういうレベルで問題を討議しておったのでは効果的ではないのではないかと判断をいたしまして、別な一つ工夫をこらしてみようと今考えているわけであります。

[059]
日本社会党(社会民主党) 細迫兼光
その別な工夫の中に、今申し上げましたように、李承晩ラインによる、韓国側の不法な侵害によるわが方の損害、これの賠償請求、この請求をなさるつもりかどうか、あるいはわが方が放棄した請求権、これを考慮すべきことの主張をなさるかどうか、この2点をはっきりしてもらいたいと思います。

[060]
外務大臣 大平正芳
要するに、諸懸案というものは同時に解決をして国交の正常化に入るべきものと思っております。