昭和30年12月07日 衆議院 農林水産委員会

[043]
日本社会党(社会民主党) 赤路友藏
日米行政協定24条について、防衛庁長官はどういうふうにお考えになっておるか、その点を御答弁願いたいと思います。

[044]
防衛庁長官 船田中
行政協定第24条というのは「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第1条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」こういうふうにあるのでありまして、この日本区域というのは日本国の領域及びこれに近接する公海を言うものであろうと存じます。

領海につきましては御承知の通り国によってだいぶ解釈が違っておるようでありますが、従来大体3海里というふうに考えておるわけでございます。

[045]
日本社会党(社会民主党) 赤路友藏
今の御答弁の中に少し変な点がありましたが、領域はわかります。領域は御承知の通りに日本は1932年のヘーグ会議以来ずっと3海里を主張しております。これはわかる。公海という言葉があったが、それはどういうことですか。その点をちょっとお聞きしておきたい。

[046]
防衛庁長官 船田中
これはただいま申し上げましたように、日本国の領域及びこれに近接する公海、こういうことを申したのでございます。

[047]
日本社会党(社会民主党) 赤路友藏
近接する公海とはどこまでの距離をさしますか。近接する公海の距離の限度はどこに置かれているのですか。近接する公海だけではわからぬ。近接とは何ですか。

[048]
防衛庁長官 船田中
それはこの24条に規定しております不正な急迫した脅威がもし生じた場合において、近接した公海でありますから、その具体的の事態に応じて判断していく以外にない。結局常識的な判断になることと思います。

[049]
日本社会党(社会民主党) 赤路友藏
これは重大な問題なんです。今おっしゃるのは、近接した公海で起ったことを具体的な問題として常識的に判断する、こうおっしゃってておる。そうすると、李ラインはどこに線が引かれておるか。李ラインはあの地図で見たらおわかりの通り、一番日本に近接しておるところは対馬の沖3海里なんです。あれはちょうど3海里の線を走っておるのです。そうすると、近接した公海において事件が起っておると常識的に考えなければいけない。そうでしょう。近接した公海内において事件が起っておると当然解釈される。そう解釈してくると、あなたの御答弁からいくならば、当然日米行政協定の24条でアメリカ政府と協議しなければならないということになりやしませんか。どうもあなたの御答弁ではちょっと私は納得いたしかねます。

[050]
防衛庁長官 船田中
ただいまの御質問でございますが、これは抽象的にこうときめてかかることはできないと思います。具体的の侵略がどの地点において起ったか、こういう個々の問題について判断していかなければならないかと思います。

[051]
日本社会党(社会民主党) 赤路友藏
これ以上あなたとやつてみてもどうかと思います。これは国際法的な一つの観点の上に立たなければならぬと思う。ここに外務次官もアジア局長もお見えになっておりますが、これらの点については別に申し上げませんが、あなたのおっしゃった近接する公海ということは重要なことであります。それから具体的に攻撃され云々という問題になってくると、国際法上の言葉の定義の問題にもなりますが、一体公海を航行しておる日本の船あるいは公海において操業をしておる日本の船の国際法的な見解からする地位というものは何なのか。これは私が説明するまでもなく御承知だと思いますが、公海上において日本の漁船の中で起った事件、犯罪にしてもその他の事件にしても、それらは当然日本国のいろいろな国内法によって処理されておる。だから一部では――現在では国際法学者の中においても、公海における船舶というものは、これが日本の船であるならば、当然日本本土の一部であるという見解も出てくるわけです。もっと抽象的な言葉になるかもしれぬが、これは本土の付有する島嶼であるという見解も出てくる。

特に重大なことは、あなたが近接する公海を24条の中にお認めになるということになれば、政府は当然日米行政協定の発動を責任をもってやらなければならぬということになるのです。近接する公海というものをこの中に入れないで、日本区域として3海里という線を押えていくならば私は申し上げません。あなたのおっしゃる言葉でいきますと、これは当然日米行政協定に対する態度を明確にしてもらわなければならぬということになるので御答弁を願いたい。

[052]
防衛庁長官 船田中
先ほど来申し上げております通りに、これは個々の具体的の問題につきまして判断すべき問題だと存じます。