昭和33年08月01日 参議院 外務委員会

[042]
日本社会党(社会民主党) 岡田宗司
水産庁長官にもう一点お伺いします。これも日韓の漁業の問題ですけれども、さきに衆議院の外務委員会でも問題になった点ですが、李ラインを認めてそして日韓合弁の漁業会社を作って、その日韓合弁の漁業会社に属する船だけが李ラインの、つまり朝鮮側の方で操業をできるようにするという案がある。

これは下関においても、対馬においても、長崎においてもことごとく猛反対、これは一部の大きな漁業資本家を利するだけになるであろうということは想像にかたくないことですが、これについて一体そういうような計画がどこから出てきたのか、そしてそういう話は水産庁でも聞いて知っているのか、ある程度関与しているのか、あるいは水産庁はこれに反対なのか、この点一つ水産庁側としての御答弁を願いたい。

[043]
説明員(水産庁長官) 奥原日出男
在日韓国人の中に日韓合弁企業の構想を立てまして、そしてその趣意書のようなものを配っている、こういう事実はわれわれ承知をいたしております。

しかし、水産庁といたしましては、これは全く今日の段階においては、日本にとりましては百害あって一益なきアイデアである、そういう考え方を堅持しておるのであります。それであくまでも漁業交渉によりまして李ライン問題等をあるべき姿に解決するということが望ましいのでございまして、合弁企業の問題はこれはそういう問題が解決された後において、韓国の中でそういう計画を立てる者があり、日本の漁業者の中でそれに乗りたい者があれば、それはそういうことはあり得るかもしれません。しかし、それは単にその企業が合弁企業であるということにすぎないのでありまして、合弁企業なるがゆえにそれが韓国の沿岸において他の者を排斥して特別なフェーバーを持つという筋合いのものであるべきではない、かように考えておるのでございます。

幸いにいたしまして、今日までそういう韓国人の方で配っております趣意書に対しまして日本の漁業者がこれに賛成しておる者は全然ない状況を掌握いたしておりますので、われわれもあまり相手にするのもおとなげないというような気持で見ておる次第でございます。



[054]
日本社会党(社会民主党) 岡田宗司
日本側の船が李ラインを越して魚をとった。すぐにその船も没収される。乗組員は向うで、国内法によって裁判される。それで刑期が終えても抑留、日本側の方では、ただまあにせの船員手帳を持って密入国した者を処罰する。まことに寛大な処置なんですね。それで、私はそれではなかなか韓国からの密入国は防げないと思います。

やはりこちらも相当、密入国をする場合のその船なんかについても、没収をするとか、密輸出入に従事する向う側の船もどんどん没収するとかいうことにしますと、来にくくもなり、それから渡航賃が高くなるから、その面からも来る人がだんだんなくなる。私は、やはり向う側でもそういうふうなことをやっておるのですから、日本側だって、それは日本に対して非常な不利な事態を招くようなそういう船などに対しては、これは法律の改正等も必要ですけれども、やるということが必要なんじゃないのか。

どうもその李ラインの問題、韓国との問題というと、年中何か弱腰、逃げ腰で、向うからの不法なことはさっぱりこっちでぎゅっと押えることができないということでは、全体の交渉も非常に不利になるというふうに考えるので、一つ海上保安庁の方でもその点は研究してもらいたいし、将来そういう不法な密輸出入なり、あるいは密入国なりについてはもっと厳重な処置をとるような方法を、一つ法務省と相談して考えてもらいたい、こういうふうに思います。