昭和28年03月06日 参議院 予算委員会

[030]
日本社会党(社会民主党) 内村清次
先ほど岩木君の質問に対しまして総理大臣は李承晩ラインは認めないと、こう言っていらっしゃいます。で日本の権益はやはりそのラインは認めない形で今後も漁区の問題にいたしましても、漁獲の問題についての漁船の行動というものは展開されて行く。

ところが李承晩大統領がこの声明を出しました中には、これは明らかにそのライン内に入って来る、即ち日本の漁船、艦船があるとしたならば、これは日本が韓国との関係を元のように敵対的なものにしようと望んでいることである、敵対行動であると、ここまで強く李承晩大統領は声明しておるのですよ。

日本の総理大臣はこれは日本の権益内である、李承晩ラインは認めない。こういうようなことになって一国のこの大統領及び又一国の総理大臣がここにラインを基点として一方に侵入すれば敵対行動と認めるというような重大発言がなされておるのに、一体これはどういうふうになって参りますか。外務大臣のおっしゃったようなことではこれは到底現地におけるところの紛争というものは解決しないのです。重大な問題になって来るのですよ。

この点は総理大臣といたしましては明確に私は先ほども、昨日の質問にもこれは言つておりましたが、根本的な解決を早急にとる、而も又早急にとる以前に、これは総理大臣の言を、即ち日本は信じてどこまでも漁船その他は現地の、即ち漁区の問題や、或いは漁獲の問題は、行動をするというようなことを併せて声明を一つするような答弁がなくてはならない時機ではなかろうかと思う。それに対しましては総理大臣はどうお考えになりますか。

[031]
外務大臣 岡崎勝男
韓国側ではいろいろの声明とか発表とかをいたしておりまするが、それが常に政府の正確な発表であるか、或いは李承晩大統領の発表であるか多少正確でない場合が多いのでありまして、これは恐らく韓国側でまだそういう点についてのやり方が確定していないからじゃないかと思います。

いずれにいたしましても、李承晩大統領は、日本と韓国の間の関係をできるだけ密接にすることがこの際は非常に必要だということを力説しておられるのでありまして、私はその根本的な考え方から出発いたしまして、勿論この国と国との間のいろいろの意見の相違はありましょう、これらは忍耐強く相互に話合って解決する以外に方法はないのでありまするが、併し根本的には日韓両国の親善ということを李承晩大統領も基調といたしており、吉田総理もこれには全く同意見なのでありまするから、これで解決ができると私どもは信じております。

いずれにしましても只今岩木委員にお答えいたしましたのは、こういう根本観念からいたしまして、李承晩ラインについては、これは勿論我がほうには異議があり、認めておりませんけれども、併しそれによっての紛争は日本の安全を危殆ならしめる種類の、性質のものでない、こう信じておるのであります。