昭和39年05月14日 参議院 逓信委員会

[065]
日本社会党(社会民主党) 横川正市
これはちょっと問題からはずれますけれども、時事問題ですから海上保安庁に聞いておきますが、あなたのほうの持っている船は、これは公的な船で、その公的な船が、またこれは新聞記事では、おかしいのですが、たった30何トンかの警備艇に270トンの船が、「ちくご」というのが韓国に連れ去られておるわけなんでありますけれども、実際上、これは業務と関係して、どうなんでしょうか、もっと自衛手段なんというものはないものなんでしょうか。

それからもう一つ非常にふしぎに思うのは、こういう場合の通信連絡はどうやってくるのか。たとえば毎日の記事を見ると、7時間、朝日を見ると、9時間、日経を見ると、10時間、読売も、9時間でありますけれども、抑留された時間がまちまちなんですね。これから見ると、一体、巡視船というのはどういう通信機材を持って行動されているのか。

第1の問題は、他の委員会でもいいですけれども、第2は、さしあたっての問題ですからお聞きいたします。

[066]
説明員(海上保安庁警備救難部長) 猪口猛夫
御質問の点お答え申し上げます。御承知のように、私のほうの巡視船は、いわゆる国際法上は公船でございまして、片や韓国側の、小なりといえども、これまた公船であることは間違いないと思う次第でございます。

いかにも現象的に見まして、何だか例としては非常に変でございますが、今朝来もいろいろお話がございまして、軍艦「武蔵」が何かどっかのモーター・ボートにパクられたのじゃないかという話がありましたのですが、まさに現象的にはそういう感がいたしまするが、しかし問題は、御承知のように、李ラインというものの存在に関する両国間におきます焦点が非常な問題でございまして、それをめぐってのお互いの公船としてのやりとりであるということでございまして、単なる物理的な船の大小ということではないと思います。もちろん実力行使するという点につきましては、まさに、先ほど申し上げましたように、軍艦「武蔵」とモーター・ボートというような例もあるいは合う問題であるかもしれませんが、実力行使するということにつきましては、先生方も御推測だと思いますが、それから起きます連鎖反応的な相当重大化する問題を考えますと、とうていそういうことは考えられませんし、私たちは、そういうことは厳に漁船保護に従事しております巡視船の船長に戒めておる次第でございます。その点は十分了承していただきたいと思います。

それからもう1点は、通信連絡が新聞紙上でまちまちではないか。まちまちであっても、とにかく長くかかっているではないかということでございますが、通信連絡は決して長くはかかっておりません。詳しく、私、手元にその資料を持っておりますので、御説明申し上げますと、無線といたしましては、長くかかっているかもしれませんが、時間的に申しますと、大体事件の起きました地点から1時間以内で、大体50分くらいで本庁に到達している次第でございます。無線としては、まあ技術的には少し時間がかかると思われます、私たちも思っているのでございますが、これを察しまするに、そのやりとりの関係とか、あるいは、御承知のように、お互いにこういう問題は、相手国もそうでございますが、私たちも、ある程度の通信秘匿の関係上、暗号等に翻訳するということもございますので、おのずと時間が普通の通信よりも余分に消費されるということは想像がつく次第でございます。

ただ、新聞記者が言っておりますように、自分たちが入手した時間が非常にかかったということではないかと思う次第でございます。釈放されるに至ります間の時間は、12時55分に事件が起こりまして、釈放が晩の10時40分でございますから、約10時間でございますか、10時間ぐらい釈放までにはかかっていることでございますが、通信等について、そんなにはかかっていないことをお答え申し上げたいと思います。

[067]
日本社会党(社会民主党) 横川正市
公船というのは、資格からいくと、たとえば外交官のビザを持って海外を旅行した場合に身分の保障をされるように、公船の場合には、海上でもそういう保障というのはあるのじゃないのでしょうか。

これは何か国際航海条約か何かの中に、公船の場合の航行については、何と何とかはいかぬのである、何と何とはいいというので、こういうふうに相当よいほうの範囲というのは広いのじゃないのでしょうか、どうですか。

[068]
説明員(海上保安庁警備救難部長) 猪口猛夫
国際法上、または国際慣習上、公海におきます公船に対するあれは一種の治外法権的な、治外法権とは申しませんが、治外法権的な大体形で従来やりとりをされている次第でございます。

[069]
日本社会党(社会民主党) 横川正市
これは、何といいますかね、自衛というのじゃなくて、こちらに正当な理由があって、こちらに力があったら、向こうの小さいのを引っぱってくるぐらいなことは、引っぱってきても紛争として心配をするということではなしに、何か特別にどうも朝鮮海峡というのは遠慮しているのじゃないでしょうか。

あなたのほうの警備体制は普通ですか。

[070]
説明員(海上保安庁警備救難部長) 猪口猛夫
これは先ほどもちょっと申し上げましたが、実力を行使するという問題以外にはまあ問題はないと思いますが、先ほど申しましたように、実力行使をすることが日韓関係においてどういう結果を来たすかということは、重大なまあ国策上の問題だと思われます。

実力を行使する段階に至りますれば、その相手国の船の大小いかんにかかわらず、向こうの公船に対して実力を行使したということから起こりますその結果の重大性をある程度まで判断し、それに対する態度をきめてからやるべきではないかと私たちは考えておる次第でございますが、それはとにかくといたしまして、とにかく私たちの立場といたしましては、日韓間に不必要な摩擦を起こしたくない。過去にも約20件ばかり追跡とか、あるいは銃砲撃とか、あるいは臨検とか拿捕もありましたが、20件くらいそういう機会があったわけでございます。

それを耐えしのんで現在まで来ておるのでございまして、御承知のように、日韓交渉もまた再開されようというときに、ここに相手船が小型であるからというようなことで、簡単にと申しますか、とにかく実力を行使するというようなことはとうてい考えられない立場にある次第でございます。

[071]
日本社会党(社会民主党) 横川正市
割り切れませんが、ここはその委員会じゃありませんから、その問題はまた別のところで審議してもらうとして、先ほど運輸省から答弁のありました点は、ぜひひとつ改正に踏み切っていただくように御努力をいただきたいと思います。