昭和28年12月02日 衆議院 予算委員会

[090]
改進党 中曽根康弘
しからば閣僚にお尋ねいたしますが、一体何ばいの船がソ連、中共、南鮮及び蒋介石政権によって拿捕れさて、何ばい帰って来たか、ここでお示し願いたい。

[091]
外務大臣 岡崎勝男
正確な数字は、ここに資料を持っておりませんから、後ほど差上げます。

[092]
改進党 中曽根康弘
だれか持っている閣僚はいませんか。木村保安庁長官お持ちですか。

[093]
保安庁長官 木村篤太郎
私は所管外でありますがお答えいたします。中共に拿捕されている船舶、昭和28年11月12日現在隻数130隻、人員は詳細なことはここにありませんから言いません。乗組員で帰還した者が1221人……。

(中曽根委員「未帰還隻数だけでいいです、ソ連はどうです」と呼ぶ)

ソ連はたくさんはないようです。

(中曽根委員「相当あります、48はいある」と呼ぶ)

それは耳寄りです。(笑声)

(中曽根委員「国民政府はどうです。」と呼ぶ)

国民政府はわかっておりません。

[094]
改進党 中曽根康弘
よろしいそれじや私から申し上げましよう。

私が調べました最近の数字によりますと、案外国民に知られておりませんが、11月30日現在ソ連は48はい、中共が114はい、国民政府が29はい、韓国が58はい、合計249はいの船が未帰還になってその家族が泣いておる。われわれは李承晩ラインだけで捕えられていると思っていて、中共あるいはソ連のことは忘れておる。ところがあにはからんや、日本は北からも南からもこういう海上における圧迫を受けておる。海洋国民である日本国民がなぜこんなみじめな状態になっておるのですか。

われわれが聞いた情報によりますと、恐るべきことには根室の漁民は船を返してもらいたさに、1ぱい帰って来たらマレンコフに感謝決議をやった、それは共産党が使嗾してやらしておる、マレンコフに感謝決議をやれば帰って来る、あるいは宗谷の漁民は例のスパイ容疑の事件でつかまった船長の裁判を寛大にやって早く樺太に返してくれと言っておる、ソ連をいじめるとまたとられるから、現状維持程度でやってくれと言っておる。これくらい国民が卑屈になっておる。内閣が知らない間になぜ日本がこんなみじめな状態になっておるのですか、お尋ねいたします。

[095]
保安庁長官 木村篤太郎
お答えいたします。私もまことに同感です。残念しごくに思っております。かるがゆえにわれわれは一日も早く日本の自衛体制を整え、海岸警備の全きを期したいと思っております。