昭和32年11月08日 衆議院 外務委員会

[068]
自由民主党 山本利壽
それではお伺いいたしますが、国際赤十字の代表は、日本の大村の収容所及び釜山の日本漁夫が収容されておる場所をかつて視察し、それに基いての結果報告を日本にもしたことがございますかどうか、承わりたい。

[069]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
私の就任前でありますが、2年ほど前にたしか国際赤十字の者が参りまして、大村及び釜山の収容所を視察したということを聞いております。

[070]
自由民主党 山本利壽
その結果についてはお聞き及びはないのですか。視察したということだけを御存じであって、その結果がどうであったかということは御存じありませんか。

[071]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
結果というのはどういうことでございますか。

[072]
自由民主党 山本利壽
その報告書をごらんになったことはないかというのです。私はなぜこういうことを言うかといえば、これは両方の政府の役人がいろいろ交渉しても、わが方は公使も大使も向うで受け入れてくれない。向うは日本へ来ておる。それを相手にして全権を持っておる者として交渉せられ、その人間がこれでよかろうと言って帰っても、またくつがえされてくるようなことであるから、私は向うの国情は知らないけれども、あまり当てにならぬようにわが国民は今思っておる。

そうすると、これは人道的立場に立つところの赤十字であるとか、あるいはその他国連であるとか、一般の世界の世論によって正しいところへ持っていかなければならぬが、その世論をわが方に有利というか、正しい方向に持っていくような努力が、日本の外務省においては着々となされておるかどうか。

たとえたならば、ここに英国の「エコノミスト」という雑誌がございます。これは今年の9月19日付でありますけれども、これに、韓国の情報局の者が――オフィス・オブ・パプリック・インフォーメーションというのですが、そこの者が署名入りで出しておる報告によると、国際赤十字の代表が大村と釜山の収容所を見た結果は、格段に向うの方がいいということを書いておる。さらに日本に抑留されておるところの朝鮮人は、単に朝鮮人であるということだけであそこへほうり込まれて、そして裁判も受けなければ、判決も受けないで置いておかれるというようなことがここに書いてある。こういうことが事実であるかどうか。私は事実でないと考える。

私たちは、この委員会から、釜山に行って、あるいは李承晩とも会い、役人でなしに、政治家同士が手を握って話したら、この問題は解決するかと思って行きたいということを申し出たことがあったけれども、韓国側はこれを受け付けなかった。私どもは大村の収容所は視察したことがあるけれども実際の釜山の収容所は見ていない。ところが釜山の収容所に収容されておるところの日本人漁夫からの手紙によると、まことに言語道断な、あわれな状態のことがよく書きつづられておる。だからわれわれは大村収容所における待遇の方がよいと思っておったのに、こういう世界じゅうの人が読むようなものにちゃんと麗々しく出ておる。

これはやはり向うの宣伝といいましょうか、この世界の世論を引きつけることに対する努力が、韓国の外務省側の方がはるかにすぐれておるのではないか、かように考えるから今の質問を申し上げた次第であります。

[073]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
ただいまの収容所の施設等の問題につきましては、赤十字が両方を視察してみまして公平な報告をしておるわけでございます。私どもとしましてはやはり釜山の収容所もそうよくないという報告を受けております。

ただいま御指摘になりました「エコノミスト」の記事につきましては、これは明らかに事実を曲げるものでございますので、私どもとしましてはさっそく在英日本大使館を通じまして、それに対する反駁文を投書させております。

[074]
自由民主党 山本利壽
さらにこの方面に対しても努力して、世界の世論を有利に導かれるように希望いたします。