昭和28年09月11日 参議院 水産委員会

[003]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
昨日経過を申しておきましたが、それ以後の状況につきましてここに御報告申上げます。

海上保安庁の巡視船5隻並びに水産庁の監視船3隻は、依然として済州島の東方の李承晩ラインの中に現在も警戒を続行中でございます。10日、即ち昨日の午前8時以後本日の午前8時までの間に判明いたしました事件は、臨検、退去を命ぜられましたものが12隻であります。拿捕はございません。韓国艦艇は、これらの臨検をいたしました12隻の漁船より、後日拿捕する場合の証拠として、李承晩ラインを侵犯しないとの誓約書を取っている模様であります。

次に、韓国側の昨10日24時以後李承晩ライン内にある日本漁船を実力により拿捕するとの強硬な方針は、昨夕の新聞報道によりますれば、これは新聞の報道の上のことであります、即ち、釜山のUP電、或いは京城のAP電等のことを指すのでありますが、日本側が日本漁船の李承晩ライン外退去を指示したとの理由により、拿捕命令を撤回したとの報道がありますが、巡視船は、同海域内の操業漁船に対しては、拿捕等の危険防止については極力注意しておりますが、直接李承晩ライン外への退去を指示したことはございません。又、韓国艦艇は依然として同海域を遊弋しておりまして、引続き臨検、退去措置等を続行しているようであります。前評拿捕撤回命令につきましては、本日午前0時頃同海域におきまして韓国軍艦と巡視船の「あまくさ」が現場において接触いたしましたので、その際の「あまくさ」船長からの報告によりますれば、韓国艦艇としては未ださような命令は受取っていないということであります。



[018]
日本社会党(社会民主党) 松浦清一
李承晩ラインの公表があったのは昨年の1月18日で、大邦丸事件の起ったのが昨年の2月4日、竹島で海上保安庁の巡視船が射撃を受けたのが今年の7月12日と、こう3回も連続して韓国側から非常に屈辱的な攻勢を受けているわけですが、日本が独立をして、アメリカとの間の外交折衝というものは頻りに行われておって、韓国のこの屈辱的な攻勢に対する外交というものが非常に手ぬるに緩慢に行われているという気がするのですが、これ以上一体打つ手はなかったものなんですか。

[019]
外務大臣 岡崎勝男
私はもうあらゆる考え得る方法は尽していると思いますが、若し何か名案がありますれば喜んで伺います。



[082]
自由党(自由民主党) 青山正一
この李承晩ラインを固執する一つの理由として、この李承晩ラインを通って日本から密輸とか或いは密航が行われているということを韓国側が挙げておるらしいのですが、そういう事実の有無がありますかどうですか。その点について一つお聞きしたいと思うのです。

[083]
説明員(法務省入国管理局次長) 鶴岡千仭
そういう点は、実は私のほうが直接関係いたしますよりも海上保安庁のほうでお取締り頂いておるわけでございますので……。

[084]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
青山委員の御質問にお答えいたしますが、その前にちょっと御説明いたしますが、税関の仕事或いは出入国管理の仕事の海上における取締は私のほうで一手引受けなんでございまして、それで朝鮮と日本との間にはかなり密航、密輸も現実に件数は出ております。ただ先方がこの機会に申しておるのは、それはまあ言わんがためのじゃないかと思うのでありますけれども、現実に今年に入りましてからも全体の密航、密輸の海上における検挙数の大部分は、朝鮮との間であることは事実でございます。

[085]
自由党(自由民主党) 青山正一
朝鮮のお方が日本へ来る数が多いですか。それからこちらのほうが向うへ行く数が多いですか。その点はっきりして頂きたい。

[086]
説明員(法務省入国管理局次長) 鶴岡千仭
今日の日本人が韓国のほうへ参りまするのは、いろいろ制限がございまして、今日の両国間の交通は殆んど一方交通と申してよろしいと思うのであります。つまり韓国人が日本へ入って参りますのが多いのでありまして、それに比べまして、こちらから向うのほうへ行かれる新聞記者の諸君などの数は極めて微々たるものでございます。

[087]
自由党(自由民主党) 青山正一
日本に登録されておる韓国人の数は如何ほどですか。それからそれ以外に推定としてどれだけ入っておりますか、その点について。

[088]
説明員(法務省入国管理局次長) 鶴岡千仭
今確実な数字は出しますが、大体54~55万程度の者が登録いたしておりますが、その中にどの程度の数字のものが登録をしないで、不法に滞在しておるか、これは実は非常にむずかしい推定の問題でございますので、何とも申上げかねるのでございます。

これはいろいろ説がございまして、多い人になりますというと、10万くらいあるだろうというような説もございますけれども、これはもう全然皆あてずっぽうでございまして、こういう席で申上げるような数字では実はございません。